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2018/06/01

Norikazu Iwai

広報戦略

広報戦略

ガールズケイリンの女王・石井寛子(東京104期)が福岡のヤフオクドームで、福岡ソフトバンクホークスー東北楽天イーグルスの始球式に登場した。過去に高木真備(東京106期)をはじめ数多くのガールズケイリン選手が始球式に挑戦しているが、この試みは非常にいいことだと思う。正直、野球場に集まったファン数万人のうち、女子の競輪があることを知っているのはほんの一握りだろう。もっとハッキリ言ってしまえば、競輪に興味がないファンがほとんどだ。
こんな完全アウェーともいうべき野球場で、石井はマウンドに上がった。野球ファンはどのような感覚でこの始球式を観たのだろうか?石井や前述した高木など競輪業界では人気がある2人だが、一般的知名度は正直なところ低い。それでも、このようなメジャーな舞台に顔出しすることは、現在の競輪業界では絶対に必要なことなのだ。
始球式以外にも小林優香(福岡106期)や太田りゆ(埼玉112期)が民放の番組に出演して、自慢の太ももを披露した。これには他の番組出演者も思わず驚きの声を上げるほどだった。男子に関しては以前、女性誌で「イケメングランプリ」という企画があった。記憶が定かであれば、岡山の石丸寛之(岡山76期)がグランプリに輝いた。しかし、それ以降、何度かこのような企画はあったのかも知れないが、今では完全に風化してしまっている。

競輪業界の広報戦略はどこを向いているのだろう?始球式やテレビ出演は外部にアピールできる絶好の場である。ただ、可能ならば始球式は関東の球場、東京ドームや神宮でやってもらいたかったと、筆者は思ってしまった。現在のプロ野球は読売ジャイアンツだけの時代ではなくなったけれども、読売ジャイアンツー阪神タイガースとか、清宮幸太郎が入団した北海道日本ハムファイターズと読売ジャイアンツの交流戦ならば、新聞の扱いももっと大きく、目立っていたかも知れない。華やかさを求めるならば、短期登録の外国人女子選手をその場に上げてもいいだろう。
「始球式は今年の自転車世界選手権の金メダリストであるニッキー・デグレンデルさんです」
と、紹介されたら、プロ野球ファンも少なからずは興味を抱くはず。メダリストという言葉が持つパワーは凄いもので、五輪や世界選手権のメダリストは特にインパクトがある。今年に関して言えば、オランダのロリーヌ・ファンリーセンもいるのだから、読売ジャイアンツー東京ヤクルトスワローズが面白いのではないか。ファンリーセンが投げ、同じオランダ出身のウラディミール・バレンティンが打席に立つ。このような接点、つながりがあるだけでも話題になるに違いない。とにかくこういう積み重ねが大事なのだ。
以前から競輪業界の広報戦略は凡打続きである感は否めない。たまにクリーンヒット、グッドアイデアが出ても連打とはならない。要するにタイムリーヒットが出ていないことになる。「イケメングランプリ」からチャンスを拡大できなかったのが最たる例、イメージキャラクターなども然りである。
だが、惜しいところまではきているような気もする。新しいファンを獲得するということで、ガールズケイリン選手推しの方向性は間違っていないはずだ。身内が満足していただけの広報戦略はもう要らない。スポーツ紙で言えば、競輪面に今回の始球式の記事が載っても意味はないのである。
2020年の東京五輪を控え、今一度、世間が興味を持つ広報戦略を根本から考えるべきであろう。

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