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2018/08/22

Yuji Yamada

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.30

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.30

日本代表選手がついに輪界で頂点を極めた。いわき平競輪場で行われたG1オールスター競輪において、脇本雄太(福井94期)選手が逃げて後続を突き放す。圧倒的な脚力を見せつけて、悲願のG1初制覇を成し遂げました。
脇本選手と言えば、G1日本選手権競輪でも強さを見せながらも逃げて負け、続くG1高松宮記念杯でも同様、今回は本当にそれ以上の強さでした。
先行した竹内雄作(岐阜99期)選手は昨年のこの大会での失敗、悔しさ、忘れ物を取りに来たかのように仕上がりは完璧。決勝戦も含めて、連日、素晴らしい走りで勝ち上がってきたと思います。その竹内選手が全開で先行しているところをアッサリ叩いて、後ろも千切って勝ったのだから強いの一言でいいでしょう。
これで脇本選手のグランプリ出場はほぼ決定(正式には競輪祭後に決定、現在は出場権利を獲得)でしょうから、この先は競技に軸足を起きつつ、さらなるレベルアップを。年末のグランプリ優勝、そして、2年後の東京五輪でのメダル獲得と、目標は常に高いところに。この目標に向かって努力していくのでしょうから、ますます強くなっていくに違いありません。
なにはともあれ、脇本選手、オールスター優勝おめでとうございます!!

ナショナルチームに所属して強くなっていく選手たち、特別競輪のみの競走参加で常に追い込んだ練習ができるという利点があるのも確かです。しかし、違法な手段を用いて強くなっている訳ではないので、他の選手たちも目標を常に高く持ち、苦しい練習に取り組めるはずです。そして、1度、開いてしまったこの差を縮めて、さらに迫力あるレースを繰り広げて欲しいです。

ガールズドリームレースでは、ついに児玉碧衣(福岡108期)選手が悲願のビッグ初V。児玉選手は普通開催では常に圧勝に近い勝ち方をしていますが、どうしてもビッグ開催になると自分のレースができていませんでした。いつまでも大きな舞台で勝てないでいると、私のように“無冠の帝王”というような呼ばれ方をされてしまうので、個人的には最も応援している選手。
今開催の児玉選手は一目で分かるくらいに相当、絞った身体で参加していました。私はもちろん、冗談のつもりで「美意識高く、エステに通ったの?」と、声を掛けたら「練習で絞りました(笑)」という返事。本人もファン投票1位、ファンの方々の期待に応えたいという気持ちが強かったんだと思います。

レース後に「やっとおめでとうが言えるよ。良かったね、おめでとう!」そう声を掛けたら「これで“無冠の女王”と言われなくなりますね(笑)」と、最高の笑顔を見せてくれました。
一つビッグタイトルが獲れたことにより、今後は肩の力が抜けた戦いができると思います。今後も児玉選手はビッグレースの優勝候補に名前が挙がるでしょうし、もう一つ勝つ日も近いかも知れませんね。本人が勝てたことに満足して、練習を抜いたりすることがなければというのが大前提ですが。
今開催はケガのために欠場していましたが、小林優香(福岡106期)選手を中心に、ガールズケイリンも個々の力はもちろん、レース内容も一層レベルアップ、魅力あるレースが増えていくことでしょう。

今開催のいわき平では連日、場内イベントが目白押しで、とても楽しい空間だったように感じました。私のホームバンクは大垣ですが、開催中に場内を歩き回る私としては、いわき平は羨ましい施設、環境だと思いました。全国の競輪場がこのような施設やイベントで開催できるような日がくれば、売り上げの心配の声も出なくなってくるのでしょうね。 今開催のオールスターは売り上げ目標を上回りましたが、これは目標額がやや低い設定だったということもあります。今後、選手も含めて、業界全体でもっともっと競輪を盛り上げていってもらいたいものです。

【略歴】

山田 裕仁

山田 裕仁(やまだ・ゆうじ)

1968年6月18日生 岐阜県大垣市出身
1988年5月に向日町競輪場でプロデビュー
競輪学校の同期で東の横綱・神山雄一郎(栃木61期)、西の横綱・吉岡稔真(福岡65期・引退)らと輪界をリード
“帝王”のニックネームで一時代を築いた
2002、2003年の日本選手権競輪(ダービー)連覇などG1タイトルは6つ
KEIRINグランプリ連覇を含む史上最多タイ3度の優勝など通算優勝110回
通算獲得賞金は19億1,782万5,099円。
2002年に記録した年間最高賞金2億4,434万8,500円はいまだに破られていない
自転車競技でも2001年のワールドカップ第3戦(イタリア)で銀メダルを獲得するなどの実績を残した
2014年5月に引退して、現在は競輪評論家として活躍中
また、競走馬のオーナーとしても知られる

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