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2018/09/03

Sakura Kimihara

恋して競輪ハンター

恋して競輪ハンター

『恋して競輪ハンター』木三原さくら=19 Hunting

残暑厳しい日々が続きますが、もう9月になってしまいましたね。
私はこの夏、7月の松戸競輪のサマーナイトフェスティバルから始まり、松戸記念、川崎アーバンナイトカーニバル、そしていわき平競輪で行われたオールスター競輪、締めくくりは小田原記念と、グレードレースをガッツリ堪能しました。
その中でもやはりG1オールスター競輪が特に強く記憶に残っています。

決勝戦、圧倒的強さを見せつけて優勝を決めたのは福井の脇本雄太(福井94期)選手。私が競輪を始めて5年の中で、脇本選手はいつも近畿の先行選手としてラインの中から優勝者を出すことに貢献していました。それは俗に言う“死に駆け”とも呼ばれる走りでもありました。ラインから優勝者を出すために自らが大敗するのを承知で先行する。競輪を知らない人からするとなぜ?と、思う戦法かもしれません。また、競輪ファンであっても、それを良しとしない人も当然いると思います。脇本選手自身がそれをどう思ってきたのかは実際聞いたことがないので分かりませんが、以前にどこかの決勝インタビュー記事で「僕はやることをやるだけなので」と、達観なのか?諦めなのか?そんな風にも受け取れるコメントが掲載されていたことがあったように思います。
そうやってラインにズッーと、貢献してきた脇本選手の悲願のG1優勝。しかもラインのために走ってきた時とスタイルは変えず、果敢に先行し、逃げ切っての優勝。その強さに誰もが驚き、賞賛の拍手を送りました。

一方で脇本選手と先行争いをして敗れた竹内雄作(岐阜99期)選手。オールスターが終わった後に少しお話する機会があり、脇本選手との先行争いについて伺うと、悔しいと話しながらも「アレを併せ切ったら見えてくるものもあると思うんで」と、話してくれました。その時の眼の光、晴れやかな表情、ハッキリとした声からは敗者でありながらも輝きを感じ、私はとても心を打たれたのです。
竹内選手は昨年のオールスターで決勝に乗りながらも残り2周半で落車し、自分の力を発揮することもなく終わってしまったのです。そこから1年、もう1度、決勝の舞台に戻ってきました。そして、そこで全力を出し切ったこと。それが今回、負けても彼を輝かせているのだと感じました。全力を出したからこそ得られるものがあり、それが竹内選手から溢れるエネルギーになっているのだと。

競輪選手に限らずですが、チャンスというものは簡単には巡ってきませんよね。苦労して得たその1回のチャンス、一瞬のチャンスをモノにするというのはさらに難しいこと。モノにできない人間が世の中には圧倒的に多いのではないかと思います。でも、たとえ敗者となっても、全力を出し切れたのか?チャンスを掴むために、掴んだチャンスをモノにするためにやれることを全てやれたのか?そんな過程が財産となり、人の魅力を作るのだと、竹内選手からお話しを伺って改めて思った次第です。

競輪選手で勝ち続けている人はいません。どの選手も1度ならずとも悔しい思いをして、負けた過去を持っています。だけど、勝つためにはその負けの分以上に努力を重ね、戦い続けることが大切なのだと、選手の走りに教えられました。

【略歴】

木三原さくら(きみはら・さくら)

1989年3月28日生 岐阜県出身

2013年夏に松戸競輪場で
ニコニコ生放送チャリチャンのアシスタントとして競輪デビュー
以降、松戸競輪や平塚競輪のF1、F2を中心に
競輪を自腹購入しながら学んでいく
番組内では「競輪狂」と、呼ばれることもあるほど競輪にドはまり
好きな選手のタイプは徹底先行
好きな買い方は初手から展開を考えて、1着固定のフォーメーション
“おいしいワイド”を探すことも楽しみにしている

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