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2018/09/12

Yuji Yamada

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.31

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.31

ファンサービスには様々な形があると思います。
売り上げ減少に悩む競輪業界においても当然、一つの対応策として色々なファンサービスを試みている現状。競輪選手会でもファンとの触れ合いを大切にしたイベントを各支部が試行錯誤しながら取り組んでいます。
そのファンサービスですが、一体どこまでの範囲で必要なのでしょうか?非開催日にボランティア参加することも良いでしょう。また、自転車教室を開いて子供たちとの触れ合いを大切にする。そして、将来は競輪選手になることを夢見てもらえるようにすることも大切なことだと思われます。
このように非開催日にあらゆるファンサービスを考え、実行することはとても有益なことです。しかし、これも競走で結果を残すことが一番のファンサービスだということを忘れないで、まずは練習があってということは忘れてはいけません。

それでは、開催中のファンサービスは何ができるのか?
1着インタビュー?
勝利者インタビューと同時にプレゼントを配布すること?
これらは日常、競輪場で普通に見受けられるファンサービスであります。ですが、私が現役時代に考えていたことは、開催中に出来るファンサービス、結果を出すことが何よりも一番ということでした。結果を出すために毎日が練習で終わり、家庭のことも数々、犠牲にして生活していました。若い頃は長期休養することもできずに、新婚旅行も連れて行ってあげていない。落車などもあるので、命を懸けて戦っているとも思っていました。
そこまで自分自身を追い込んで、ピリピリと緊張感を持ってレースに参加しているところで、軽い気持ちでインタビュー受ける気になれると思いますか?ということで、受け入れ難い内容のファンサービスだと考えていたこともありました。
これに関して、賛否両論があっていいと思います。
「高額な賞金を獲っているのだからそれくらいはいいだろう」
「そんな道を選んで選手になっているんだから仕方ない」
というような厳しい意見があっていいと思いますが、私はお笑い芸人になって高給取りを目指したのではなく“競輪選手”になった訳です。このファンサービスの内容については今後も熟考しなければいけないでしょう。

9月14日から高知競輪場においてG2共同通信社杯が開催されます。共同通信社杯は自動番組による勝ち上がり方式という特色もあり、選手時代も非常に楽しみにしていた大会でした。なんとなく他人の意思を感じる番組で走るより、全て自分の運も必要なのか?と、思うような番組。いつも見飽きた並びより、どうして戦っていったらいいのだろう?そんな風に悩む番組になったりすることもあります。“運も実力のうち”で、 先行1車になったらラッキーじゃないですか。そんなワクワク感があり、しかも高額賞金の大会です。
今開催の参加予定メンバーを確認すると、ビッグ3場所続けて見せ場を作ってきた脇本雄太(福井94期)選手を含めて、ナショナルチームのメンバーが非参加なのは残念。ですけれども、“鬼の居ぬ間に洗濯”じゃないですが、全ての選手がチャンスだと思って、今開催を盛り上げてくれると思います。
来年はオリンピック前年ということで、ますます優勝候補筆頭と言われる選手の非参加のビッグ開催が増えていくことでしょう。これは逆に、新しいスター誕生のチャンス。特に100期代の選手たちはこのチャンスをシッカリものにして成長して欲しいです。そして、競輪ファンのみなさんにも競輪界の“新しい風”を歓迎して、盛り上げていただきたいです。

【略歴】

山田 裕仁

山田 裕仁(やまだ・ゆうじ)

1968年6月18日生 岐阜県大垣市出身
1988年5月に向日町競輪場でプロデビュー
競輪学校の同期で東の横綱・神山雄一郎(栃木61期)、西の横綱・吉岡稔真(福岡65期・引退)らと輪界をリード
“帝王”のニックネームで一時代を築いた
2002、2003年の日本選手権競輪(ダービー)連覇などG1タイトルは6つ
KEIRINグランプリ連覇を含む史上最多タイ3度の優勝など通算優勝110回
通算獲得賞金は19億1,782万5,099円。
2002年に記録した年間最高賞金2億4,434万8,500円はいまだに破られていない
自転車競技でも2001年のワールドカップ第3戦(イタリア)で銀メダルを獲得するなどの実績を残した
2014年5月に引退して、現在は競輪評論家として活躍中
また、競走馬のオーナーとしても知られる

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