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2018/12/13

Norikazu Iwai

加藤慎平、引退!!

加藤慎平、引退!!

また、超一流レーサーが1人、バンクを去ることになった。加藤慎平(岐阜81期)、40歳。若すぎる引退にファン、関係者も驚きを隠せなかった。2000年には競輪祭・新人王に輝き、早くから将来を嘱望(しょくぼう)される。2005年にはG1全日本選抜(岸和田)、KEIRINグランプリ(平塚)を制した。しかも同月内に2回のビッグレース制覇で、1ヶ月での獲得賞金額1億3,000万円は現在も抜かれていない。KEIRINグランプリの表彰式では地元・岐阜の法被(記憶では長良川)を着て臨んだのが印象的だ。優勝を確信していたと言うか、きっと優勝する自信があったのだろう。
2009年のG2東西王座(高松)を勝利して、全グレードカテゴリーで優勝という偉業も達成。自らが主催する闘心會も結成し、北京五輪のケイリンで銅メダルを獲得した永井清史(岐阜88期)らと、一時期は競輪界を席巻したものだ。しかし、その後は持病の腰痛に悩まされ、結果を残せず、成績は下降線をたどった。一時期、口の悪いマスコミ関係者は「慎平なら離れるから、別線を相手に買えば車券は当たる」などと、公言していたものだ。

成績は奮わずともその人間性から仲間は多く、アイドル好き(特にSKE48、松村香織推し)を公言していたこともあって芸能関係者とも親交が深い。そして、喋りのセンスも抜群で、グランプリのゲスト解説者として何度も呼ばれていたと、記憶している。何しろその喋りは聞いている人間を飽きさせず、ギリギリのトークは大爆笑を誘う。成績が悪くても、彼の周りには絶えず人垣ができていた。人間力とでも言うのだろうか、人を惹きつける魅力があった。車券は外れても、どこか憎めないキャラだった。

選手の引退は難しい、どこで線を引くのか?加藤より年上の選手が今でもS級S班で活躍している。加藤の場合は来季からA級陥落が決まっているとのこと。1度、頂点を極めた男にとっては、耐え難い屈辱だったのかも知れない。ボロボロになるまで走るタイプ、下のレベルで走ることがプライドを傷つけるタイプ、どちらが正しいかは分からない。ただ、ファンとして加藤のようなタイプの選手が引退するのは寂しい限りだ。A級でも構わないじゃないかと、思ってしまう。まだ40歳、少なくともあと5年は現役を続けられたはず。
「悔いはありません」と、新聞紙上に彼のコメントが載っていた。果たして本当なのだろうか?「悔いは残らない」は社交辞令的な要素が多く含まれていると、筆者は思っている。これが50歳を過ぎたロートルなら話しは別だが、40歳と言えば、普通の社会ではバリバリの働き盛りだ。身体が資本のプロアスリートと一般の人を比べても意味はないかも知れないが、そう言いたくなってしまうものである。

今後の活動は未定らしいが、ある消息筋によると「マスコミ関係の仕事に就くらしい」とのこと。加藤のセンスを考えれば、争奪戦が繰り広げられてもおかしくないだろう。評論家も高齢化が進み、時代にマッチしていないような人も見受けられる。テレビでも新聞でも毎回、同じことの繰り返しはつまらないとしか言いようがない。加藤が今後、どんな道に進むのか?新しいタイプの評論家として受け入れられることは間違いないだろう。
最後になってしまったが、彼ほど礼儀正しい人間、選手は少ない。今後の活躍に期待したい。

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