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2019/02/13

Junko Shitara

心に残るベストショット Vol.17

心に残るベストショット Vol.17

競輪に携わって36年(年が明けて増えました)、今回は初のG1レース開催(全日本選抜競輪)が行われた別府競輪場です。

言わずと知れた温泉の街、印象はどういう訳か冬……記念競輪は5月が多かったのに。なぜなら、以前、行われていたダービートライアルで2月に足を運ぶ機会が多かったからです。毎年、ダービートライアルが別府であった訳ではないのに印象に残っているのは、九州ゆえに中野浩一さん(福岡35期・引退)も走る機会が多くて、取材もついて回ったからでしょうか。
特徴は浜風、旧国道とバイパスに挟まれ、海が近くて風の影響がキツイという印象です。海風でも、山風でも、なんとなく湿気を感じる、お肌シットリの街。だけど、お財布は潤わない……のは私だけですか(苦笑)!?

1991年12月、始まって数年、今では懐かしい『ふるさとダービー』の開催が別府に決まり、その少し前に小倉で競輪祭を終えたばかりだったので、また、九州に“舞い戻った”感がありました。冬は魚もおいしい季節。そこで、いつも全国を飛び回る私の荷物を受け取ったり、送ったり、お土産と話しだけで済まされる留守番組の母に親孝行をしました。
『ふるさとダービー』開催の3日前に母を連れて大分空港に。今はなくなってしまったそうですが、ホバークラフトで空港から別府の街へ。関東の人間には船に乗るという選択肢はなかなか浮かばないのですが、広島―松山とか宇野(玉野)―高松などは結構、船便で移動したものです。今も重要な移動手段だと思いますよ、少なくとも郷愁をそそられるだけでなく、航空機や電車よりも海を渡るほうが早く簡便な場合がこの地区にはあったということでしょう。
この母との旅は関東では余程の高級な店にいかないと食べられなかった城下鰈(しろしたかれい)やフグをお手頃な値段で出してくれるお店を紹介していただいたり、地獄めぐり(温泉巡り)も満喫。2泊目は有名な湯布院に泊まって、朝霧を堪能した後に母を空港へ送って終了。そして、入れ替わりで続々と集まる選手を取材しながら、いつもの“競輪取材モード”に。その際に「なに、観光できていたの?家へきてくれたら、無料で温泉に入れたのに!」と、地元選手から言われて、羨ましかった、お家で温泉!!

その年の『ふるさとダービー』の決勝は豊田知之選手(岡山59期・引退)の優勝でした。直前の競輪祭を優勝した小橋正義さん(岡山―新潟59期・引退)との連携で、今風に言うなら同期、同門の絆と言ったところでしょうか。平成に入り、4日制のビッグレースが出てきたことで、自力選手は若手の台頭が目立ち始めていました。先行選手の後ろに強いマーク選手がという構図でラインを固めて、他の捲ってくる選手を牽制してゴール勝負という従来のパターンも強い先行がいての話しです。4日間、先行で戦い続けるパワーを維持するのはベテランには厳しい。勢い、追い込まれるし、捲るのも遅くなるし、失敗も増える。この時期の4日制の増加はレースを変え、世代を交代させた要因の一つだと思っています。

その後も何度も取材で別府競輪場を訪れましたが、やはり、インパクトが強いのは大塚健一郎選手(大分・82期)でしょうか。真面目で一本気なのはレースを観ていれば分かりますよね。俊敏な動きや気の強そうな表情からも生まれ持っての競輪選手らしい人という印象です。小学校でどこのクラスにも1人はいたようなヤンチャで人気者の男の子っぽい(失礼かしら?)選手です。

周囲の選手に聞いても「練習熱心、探求心が強い」と、言います。是非、大塚選手にはもう一段、階段を上って欲しいものです。ただ、惜しむらくは今の競輪のレースパターンでは徹底したマーク戦法は難しい、それを活かせる展開になりにくい。だから、どうしても自力含みの動きをして、このメンバーならマーク、この展開なら自力とチェンジせざるを得ない。これではラインは強固にならないし、ライン内の信頼にも結びつきにくくなる。でも、古くからの競輪ファンは応援したくなるタイプではありませんか?
今は全国的に若手が育ち始めていて、再びの世代交代の時期を予感させます。もしも九州に若手先行選手が育ち始めたら、大塚選手の今以上に晴れやかな表情が見られる日がくるかも知れない。なぜなら、こうしたタイプの選手は“勝ち、優勝”といった結果も大切にするのはもちろんのこと、どういう勝ち方をしたか?という経過も大切にしているから。ラインを守りながら“チョイ差し”で勝つ。こんなマーク屋の勝つレースで、笑顔全開の大塚選手を私は楽しみにしています!

【略歴】

設楽淳子(したらじゅん子)イベント・映像プロデューサー

東京都出身

フリーランスのアナウンサーとして競輪に関わり始めて35年
世界選手権の取材も含めて、
競輪界のあらゆるシーンを見続けて来た
自称「競輪界のお局様」
好きなタイプは「一気の捲り」
でも、職人技の「追い込み」にもしびれる浮気者である
要は競輪とケイリンをキーワードにアンテナ全開!

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