TOP > コラム > 『SPIRIT OF BOSS』Vol.6

コラム

一覧へ戻る

コラム

2019/02/23

Shinichi Gokan

『SPIRIT OF BOSS』Vol.6

『SPIRIT OF BOSS』Vol.6

Perfecta Naviをご覧の皆様、後閑信一です。
少し時間が経ってしまいましたけれども、今回は2月8日〜11日まで別府競輪場で行われた第34回全日本選抜競輪の模様を振り返ってみたいと思います。
別府で初めて行われたG1開催、連休でたくさんのお客様でにぎわっていました。今回の見所はナショナルチームの新田祐大(福島90期)選手、脇本雄太(福井94期)選手、深谷知広(愛知96期)選手らが欠場ということで、どんなレース展開、勝ち上がりになっていくのか?現在、競輪界の一大勢力となっている近畿勢は脇本選手が不在となっても、その勢力を維持することができるのか?ここ数年のスピード競輪から昔ながらの“競輪”になると、レース展開はどう変わるのか?迫力やスピード感は?などなど、今後の競輪界が向かう方向性としても良い判断材料になるのではないかと、私も戦前から非常に関心を抱いていました。
今シリーズは脇本選手不在の近畿勢に対して、太田竜馬(徳島109期)選手の本格化により、四国地区が力をつけてきました。そこへ中国地区の松浦悠士(広島98期)選手、S級S班となった清水祐友(山口105期)選手らも加わり、中四国ラインは近畿勢も脅かす非常に面白い勢力図となるのではないか?
また、一時期の快進撃とまでは言えないものの、再び実力を発揮してきた山崎賢人(長崎111期)選手の存在で盛り上がる九州勢。タイトルに最も近い男と言われてきた山田英明(佐賀89期)選手を筆頭に、タイトルホルダーとしての実績もある中川誠一郎(熊本85期)選手、井上昌己(長崎86期)選手、園田匠(福岡87期)選手。そして、地元・大分からは唯一の参加、是が非でも今大会の出場権獲得へ歯を食いしばって頑張ってきた大塚健一郎(大分82期)選手の存在感により九州勢の結束も盛り上がるのではないかと、その辺も楽しみの一つでもありました。

初日の特選10Rにおいては太田選手の先行を松浦選手が捉え、中四国ラインでの決着。11Rは王者・三谷竜生(奈良101期)選手が中川選手を〜強いレースを見せてくれました。12Rでは古性優作(大阪100期)選手が村上義弘(京都73期)選手の前で、捌いて立ち回る展開となって近畿のワンツー。
このように近畿勢は脇本選手不在でも戦えることをアピールしたかのようでありましたが、最終的に準決勝を終えて、決勝進出メンバーを見てみると……今までの脇本選手率いる一大勢力であった近畿勢の姿は残念なことにありませんでした。

吉澤純平(茨城101期)選手ー武田豊樹(茨城88期)選手の師弟関係に、準決勝でもラインを組んだ佐藤慎太郎(福島78期)選手が3番手につき、元ナショナルチームの中川選手、和田真久留(神奈川99期)選手が単騎を選択。そして、競輪選手の熱い魂を持つ吉田敏洋(愛知85期)選手も単騎となりました。勢力を強めてきた中四国の3人、松浦選手―香川雄介(香川76期)選手ー小倉竜二(徳島77期)選手のラインと、お馴染みのメンバーとは一味違った、最近では稀とも思える誰にでもチャンスのある決勝戦となりました。

そして、優勝は九州からただ1人決勝戦に乗り、単騎で戦った中川誠選手。赤板の第4コーナー過ぎ、外並走から力強く吉澤選手を叩いての先行逃げ切り勝ちを収め、2度目のタイトルを獲得したのです。
中川選手は2016年の静岡ダービーを優勝して、KEIRINグランプリ2016に出場。競輪選手として最高峰の目標を達成して以来、次の目標が見つからないうえに鎖骨の骨折で苦しみました。ケガから復帰してもすぐに結果は残せず、一時は“追い込み屋宣言”までしてしまい、最も苦手とする戦法へと道を選んでしまうところまで落ちてしまったように私の目には映っていました。しかし、中川選手はその後、自分自身と向き合い、自ら“ヤル気スイッチ”をON!にして、切り替えることができた中での2度目のタイトル奪取はお見事であります。

選手は皆、まずは己との闘いに打ち勝ち、それから相手との勝負に挑み、その先にしか栄光はありません。己に打ち勝ち、手強い相手との大勝負を制したことで、中川選手がさらに一皮剥けたことは間違いありません。
そのような中川選手へ心から『おめでとう!』と、伝えたいです。

【略歴】

後閑信一(ごかん・しんいち)

1970年5月2日生 群馬県前橋市出身
前橋育英高在学時から自転車競技で全国に名を轟かせる
京都国体においてスプリントで優勝するなどの実績を持つ
技能免除で競輪学校65期生入学
1990年4月に小倉競輪場でデビュー
G2共同通信社杯は2回(1996年・2001年)の優勝
2005年の競輪祭で悲願のG1タイトルを獲得
2006年には地元・前橋でのG1レース・寛仁親王牌も制した
その後、群馬から東京へ移籍
43歳にして2013年のオールスター競輪で7年ぶりのG1優勝
長きに渡り、トップレーサーとして競輪界に君臨
また、ボスの愛称で数多くの競輪ファンから愛された
最後の出走は2017年11月10日のいわき平F1
年末の12月27日に引退を発表
2018年1月に京王閣、立川、前橋でそれぞれ引退セレモニーが行われた
現役通算2158走551勝
引退後は競輪評論家やタレントとして活躍中
長女・百合亜は元ガールズケイリン選手(102期)である

ページの先頭へ

メニューを開く