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2019/04/10

Shinichi Gokan

『SPIRIT OF BOSS』Vol.8

『SPIRIT OF BOSS』Vol.8

Perfecta Naviをご覧の皆様、後閑信一です。
今回も前回に引き続き山口県・清水裕友(山口105期)選手の続編をお送りしたいと思います。

年が明けて2019年の立川G3も7着・2着・1着・1着で優勝を決めました。しかも優勝戦は単騎戦で浅井康太(三重90期)選手とのデッドヒートを制しての走りでした。現地の場内で仕事をしていた私はたくさんのファンの方々から「今年は清水裕友の年だね」とか「清水選手は今年、タイトルいけるね」などのお声を掛けられました。清水選手の走りに魅せられたファンの方が多かったと同時に、一気に清水選手への期待度が増した開催だったと思います。私も今年の清水選手がこの勢いで、どこまで登り詰めることができるのか?と、とても楽しみでした。
ですが、清水選手は次走の松坂G3を体調不良で欠場しました。昨年は9月の高知G2共同通信社杯で平原康多(埼玉87期)選手とのデッドヒートの末、見事に準優勝!そして、11月地元の防府G3で記念競輪初優勝を決めると、同月の小倉G1競輪祭でも決勝に進出して3着!さらには年末の静岡でのKEIRINグランプリ2018では単騎戦でも自分のレースに徹して、存分に見せ場を作りました。それで前述したように年明けの立川G3優勝!

私は経験上、清水選手の“雲行き”を見ていました。競輪選手もただの人間であります。細胞は胃腸が約5日周期、心臓は約22日周期、肌は約28日周期、筋肉や肝臓は約2ヶ月周期、骨は約3ヶ月周期。正常であれば、人間の細胞は新しく生まれ変わっていくものなのです!昔の先輩たちは「今、3ヶ月前の練習が出ているんだっ!」と、よく言っていたことを思い出します。これに当てはめると、清水選手の場合、9月の高知G2から3ヶ月後は年末のKEIRINグランプリ2018となります。恐らく、清水選手は年末くらいの時期から以前と違う違和感が生じていたのではないでしょうか?年明けの立川G3はオマケ(余力)で、よく頑張った方だというのが私の見解です。

そうなると清水選手は立川記念の後に9月くらいの細胞は入れ替わっていますから……「何か感じが違うんだよな?」という感覚が表れ始め、それが松坂G3の欠場なのだと、私は推測するのです。今年からS級S班となった清水選手は責任感と期待を背負いますから、中途半端な状態では走れません。身体の違和感と変化を修正して、別府G1全日本選抜競輪のタイトルを狙っていたのだと思います。
しかし、初日のレースから清水選手らしくないレースでした。気持ちの部分では確かに強く挑めているなと、伺うことはできたのですが、それに身体が反応していない。良い時の“蘇り”がないように感じました。

初日の特選は赤板で上昇してから抑えて、先頭誘導員の後ろに入りました。そのまま後ろを振り返りながら、誘導員の風受けもある状況を打鐘過ぎまで使い、本格的に仕掛けたのは残り1周チョット、約500メートルくらいでした。駆け出すダッシュ力は良かったのですが、その後の自転車が全く伸びていかない。清水選手の番手・中川誠一郎(熊本85期)選手も4コーナーでは清水選手の予想外の失速をかばい切れず、惰性に乗る形でゴールを通過。清水選手はいつも通り気合いの入った“らしい”レースを披露してくれましたが、良い時と比べると何かが足りない?という印象でした。

迎えた2日目の二次予選、ここで清水選手らしくないレースによって試練の時は訪れたのです。レースは4分戦の前から2番目のラインで周回を重ねました。清水選手は鈴木竜二選手が打鐘で先頭に出た瞬間を一気にカマシていこうっ!と、考えていたはず。背後をマークした香川雄介(香川76期)選手の詰まり方を見ると、香川選手もそのつもりだったと思います。しかし、清水選手の身体は反応せず、最終第2コーナーからの捲りになりました。それでも、マークの香川選手が離れてしまうほどの加速力、誰もが清水選手が捲り切ってしまうだろうと、信じていたはずです。が、最終3コーナーで空いていないインを併走する内側の神山雄一郎(栃木61期)選手、外側の坂口晃輔(三重95期)選手の間へ清水選手は突っ込んだ末に単独落車……場内からはどよめきが起こりました。清水選手は鎖骨を骨折、人生で初めての鎖骨骨折だったそうです。

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