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2019/06/28

Norikazu Iwai

ドーピングについて

ドーピングについて

6月15日の朝のことだった。大体、寝床に就くのが明け方の筆者だが、朝7時過ぎの電話で起こされた。電話口で友人が「大変だよ、競馬が……」と、続けるけれども、寝ぼけ眼の私は友人が何を言っているのか、最初はサッパリ理解できなかった。それでも、時間が経つにつれ、何のことか分かってきた。馬の餌から薬物が検出されたというものだった。中央競馬、地方競馬ではその餌を食べた馬が出走できなくなったとのこと。原因についてはまだ解明中だそうだが、これは競馬だけでなく、競輪界にとっても他人事ではない。なぜなら、2016年のリオデジャネイロ五輪前に、禁止薬物が入ったサプリメントがこともあろうかナショナルチームに提供されていたのだから。当時のマスコミの報道を読み返すと、あまりにも杜撰(ずさん)な管理体制だったこと分かる。サプリメントを提供していた業者はハッキリとした検査も受けていなかった。受け取る側も信頼し切っていたというもの。だが、これはあまりにもおかしいだろう。五輪前、それこそ選手はあらゆるものを犠牲にしてその舞台へ立つ準備に励んでいる。それをサポートしなければいけない立場にあるものが、それを行っていない。前代未聞の出来事だった。

日本はドーピング後進国と言っても差し支えないだろう。自転車に関して言えば、ギャンブルの競輪が主体のため、競技のケイリンは目立たない。1996年のアトランタ五輪では十文字貴信(茨城75期・引退)が1,000mTTで銅メダルを獲得。2004年のアテネ五輪では長塚智広(茨城81期・引退)、伏見俊昭(福島75期)、井上昌己(長崎86期)がチームスプリントで銀メダル。2008年の北京五輪では永井清史(岐阜88期)が日本生まれのケイリンで初めてのメダル(銅)を獲った。偉業を成し遂げた彼らだが、帰国時は注目されても1ヶ月もしないうちに彼らの偉業はほぼ聞かれることはなくなっていた。五輪という大舞台で結果を残しているにも関わらず、管理体制の甘さが、リオデジャネイロ五輪前にも出てしまったのだろう。幸いにも当時、このサプリメントを口にしたオリンピアンはいなかった。しかし、もし一度でも口にしていたらと思うと、実に恐ろしいことである。

競輪だけではない、他の競技でも然りである。不用意に置かれたボトル、薬物を混入できるチャンスはいくらでもある。競輪場(検車場)では乱雑に置かれたボトルが多くあるという。それこそライバルを蹴落とすために、悪事を働く人間(以前にも書いたが。カヌーの世界で起こっている)がいてもおかしくはないだろう。
聞いた話で恐縮だが、競輪でもドーピング違反に対する処罰があるという。ビッグレース終了後、尿検査を受ける選手がいる。ただ、ここで問題なのが競輪はギャンブルであるということ。仮に優勝した選手が陽性反応を示したとしても、既に決定が出されており、払い戻しが行われている。そこで発表しようものなら、ファンは激怒するだろう。であるから、1回目は注意、2回目は斡旋停止、3回目で引退勧告だとも言われている。だが、それでは甘いのではないか。命の次に大事なお金が賭けられている以上、1回でも陽性反応を示したのであれば、即刻で引退勧告を行うべきではないか。そして、優勝した選手がドーピング違反だったとしたら、関係団体は時間を要してでも全ての車券を払い戻すべきである。そして、ドーピングの検査は必ず抜き打ちで、参加している選手全員に行うべきでだと考える。東京五輪を成功させるためにも、今こそ競輪とケイリンが一丸となるべきだ。

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