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2019/08/22

Sakura Kimihara

恋して競輪ハンター

恋して競輪ハンター

恋して競輪ハンター 42 Hunting

8月14日から5日間にわたり名古屋競輪場で開催されたG1オールスター競輪。主にファン投票で選ばれた選手によるG1レースは白熱のレースが盛りだくさんでしたね。そして、ファン投票で投票した選手への思いを込めた車券を買いたくなるあまり、ついつい財布の紐が緩んでしまう5日間でもありました(苦笑)。

オールスター競輪では特に2つのレースが印象に残りました。それはシャイニングスター賞と決勝戦、どちらも2段駆けの展開が想像できるレースでした。
シャイニングスター賞では中国・四国勢の自力選手が4車で連携。ただ、先頭を走っていた太田竜馬(徳島109期)選手が残り2周で落車する思いも寄らない展開に……すると番手だった清水裕友(山口105期)選手がすかさず対応して先行策に出ます。本来の並びでは番手―3番手―4番手だった選手の2段駆けとなり、1着は3番手の原田研太朗(徳島98期)選手、2着は4番手の松浦悠士(広島98期)選手で決まりました。

決勝戦は北日本勢が4車で連携。先頭を走る菅田壱道(宮城91期)選手のコメントが前日から話題になっていましたね。新田祐大(福島90期)選手、渡邉一成(福島88期)選手、そして、佐藤慎太郎(福島78期)選手を連れてG1の決勝を走る意味、その重み……レース展開を想像するだけで、ドキドキせずにはいられませんでした。実際のレースでも菅田選手が残り2周から突っ張って、ラスト半周までラインを連れて先行し、その番手から新田選手が捲りを打って優勝を決めました。

どちらのレースも風を切って駆けた選手の「必ずラインから勝利者を出す」という気持ちが存分に伝わってきたレースでした。自己犠牲とも捉えられるこの考え方は勝負の世界とは言え、ラインというチーム戦に似た要素がある競輪独特のものでしょう。
ただ、オールドファンは「今、駆けておけば、いつか順番が回ってくるから」と、仰ることでしょう。その言葉を聞く度に思うのは、今、番手捲りを打つベテラン選手も、かつてはラインのために大敗覚悟で駆けてきた歴史があるということ。いつか大舞台で自分に順番がくることを信じての先行。ですから、自己犠牲より先行投資という言葉の方が合っているのかも知れません。そう、まさに文字通りで『先行』投資と、言えますね!
ただし、この『先行』投資はハイリスクでもあります。まず、その順番が回ってくる保証はどこにもありません。もし仮に次の世代が育って順番が回ってきても、その時に自身の脚力がキープできていなければ、番手から出ることもできません。さらに言えば、番手捲りを打てたとしても、勝てるがどうかはゴールしてみないと分かりません。競輪は勝負の世界ですし、1着を求める猛者が集まっています。どんなことをしても楽に勝てるレースなどないからです。

今年のG1決勝戦を振り返ると、まず2月の全日本選抜競輪は単騎の中川誠一郎(熊本85期)選手が獲り、5月の日本選手権競輪では脇本雄太(福井94期)選手がラインを引き離す捲りで個の力を見せつける完全優勝。6月の高松宮記念杯競輪では脇本選手の番手から追い込んだ中川選手が今年2度目のG1優勝を果たし、今回のオールスター競輪では新田選手が2段駆けで優勝を決めました。個の力、ラインの力がそれぞれのレースで観ることができて、KEIRINと競輪が混在している時代なのかなとも感じます。

今年のG1も10月の寬仁親王牌(前橋競輪場)と11月の競輪祭(小倉競輪場)を残すのみとなりました。KEIRINグランプリ2019の出場を懸けた争いも徐々に佳境に入っていきます。残る2つのG1を誰が獲るのでしょうか?そして、どのようなレースで、時代はどう流れていくのでしょうか?一瞬たりとも目が離せませんね。

【略歴】

木三原さくら(きみはら・さくら)

1989年3月28日生 岐阜県出身

2013年夏に松戸競輪場で
ニコニコ生放送チャリチャンのアシスタントとして競輪デビュー
以降、松戸競輪や平塚競輪のF1、F2を中心に
競輪を自腹購入しながら学んでいく
番組内では「競輪狂」と、呼ばれることもあるほど競輪にドはまり
好きな選手のタイプは徹底先行
好きな買い方は初手から展開を考えて、1着固定のフォーメーション
“おいしいワイド”を探すことも楽しみにしている

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