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2019/09/06

Yuji Yamada

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.55

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.55

『必笑』
今年の夏はこの文字をよく見たような気がします。
ゴルフではAIG全英女子オープンで、日本勢42年ぶりのメジャー制覇を果たした渋野日向子選手。“スマイルシンデレラ”と、呼ばれ、常に清々しさを感じさせる笑顔が印象的でしたね。その渋野選手も偉業を達成した日を境にして、人生が劇的に変わったことでしょう。私が昔、よく笑い話しにしていた「写真をお願いします」と、頼まれたから、私が撮る側かなと思ったら……なんと撮られる側だったというエピソードとは比べ物にはならない、次元の違う変化だと思います。この私生活の激変ぶりに対応していくこともプロには必要な能力になってきます。
そして、高校野球でも石川県代表の星稜高校がニコニコと、実に楽しそうにプレーしていました。特にエースでもある奥川恭伸投手はテレビ中継でよく映っていた分、印象深かったです。字がキレイな人間は実直そうに見えるように、笑顔は好印象を与えますし、何よりも人がよく映りますよね。しかし、笑顔が大切なことは分かっているのですが、競輪選手にとっては少し事情が異なります。競輪のレース中に笑顔を見せることは難しいですし、さらにお客様の大切なお金を賭けていただいているのに失敗したとき笑っていられるでしょうか?現在の笑顔ブームには乗ることができず、選手は 『必笑』 よりも『必勝』が求められる立場なのです。

さて、9月13日(金)から16日(月・祝)まで松阪競輪場にてG2共同通信社杯が開催されます。共同通信社杯は“新人の登竜門”と、呼ばれているように、若手の選手が多く参加する開催です。若手の選手が多いということは自力選手が多いということでもあり、迫力あるスピード競輪が楽しめると思います。現時点では113期の藤根俊貴(岩手)選手、黒沢征治(埼玉)選手、河合佑弥(東京)選手、宮本隼輔(山口)選手が参加予定となっており、同期対決はもちろんのこと、今回はナショナルチームのメンバーが不参加なので、新旧対決で世代交代を印象づけることが出来るのかも楽しみの一つとなってくるでしょう。

その中でも宮本選手は8月に名古屋競輪場で行われたG1オールスター競輪でビッグレース初参戦を果たしました。オールスター前までは20戦連続でバック線を取る積極的な競走で結果を残しており、大垣G3でも単騎で堂々の優勝していたことからも注目されての参戦でした。しかし、一次予選は岩本俊介(千葉94期)選手の先行をカマシにいくも合わされて出切ることができず、結果6着で勝ち上がりに失敗。2戦目の選抜戦は坂本貴史(青森94期)選手の先行に対して、8番手になってしまい捲れずに7着。3戦目の一般戦は近藤隆司(千葉90期)選手の先行を強引に叩いてバック線は取ることは出来ましたが、中井俊亮(奈良103期)選手に捲られて4着。最終日の一般戦は早坂秀悟(宮城90期)選手の先行を5番手で粘ると、外の野田源一(福岡81期)選手を捌いてから捲り切って1着。これがビッグレース初勝利となりました。
このようにビッグレースになると、そう簡単に自分の競走をさせてもらえません。若手の選手が世代交代を実現させるためには圧倒的な脚力の差をつけるか、レース運びの巧さも身につける必要があります。宮本選手がどのように立て直してくるのか、今から楽しみでなりません。

また、G2共同通信社杯は自動番組編成方式で実施されることにも注目して、レースを楽しんで下さい。
私は予想で、みなさんに『必笑』と『必勝』をお届けできるように努めていきます!

【略歴】

山田 裕仁

山田 裕仁(やまだ・ゆうじ)

1968年6月18日生 岐阜県大垣市出身
1988年5月に向日町競輪場でプロデビュー
競輪学校の同期で東の横綱・神山雄一郎(栃木61期)、西の横綱・吉岡稔真(福岡65期・引退)らと輪界をリード
“帝王”のニックネームで一時代を築いた
2002、2003年の日本選手権競輪(ダービー)連覇などG1タイトルは6つ
KEIRINグランプリ連覇を含む史上最多タイ3度の優勝など通算優勝110回
通算獲得賞金は19億1,782万5,099円。
2018年末、三谷竜生(奈良101期)に抜かれるまでは年間獲得最高賞金額=2億4,434万8,500円の記録を持っていた
自転車競技でも2001年のワールドカップ第3戦(イタリア)で銀メダルを獲得するなどの実績を残した
2014年5月に引退して、現在は競輪評論家として活躍中
また、競走馬のオーナーとしても知られる

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