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2019/09/26

Sakura Kimihara

恋して競輪ハンター

恋して競輪ハンター

恋して競輪ハンター 44 Hunting

先日、平塚競輪場で尾崎睦(神奈川108期)選手が地元で初優勝を果たしました。連日、選手紹介をバンク近くまで見に行くと、やはり、地元ですね!尾崎選手の名前を呼ぶたくさんの声援が聞こえてきました。
初日からたくさんの声援を受けながら決勝に進み、1着でゴールした尾崎選手。ゴール後に手を挙げて、ファンの声援に応えるその笑顔の素敵さと言ったら!尾崎選手に対してはクールな印象を持つ方が多いかも知れませんが、こっちまでつられてさらに笑顔になってしまうくらいの最高の笑顔でした。

さて、競輪にはこんな慣用句!?があります。『地元3割り増し』__普段から走り慣れ、特徴や風などを知り尽くしたバンクでの競走。そして、前述した尾崎選手のように地元ファンからのたくさんの声援。それらが選手のパワーに変われば、いつも以上の力が発揮できる。そういう意味合いから生まれた言葉だと思います。しかし、それを揶揄してかこんな言葉も聞きます。「地元3割引き」__たくさんの声援は期待の表れです。それがプレッシャーとなり、勝たなければという重圧を感じてしまった時、自転車は思うように前へ進んでくれないのかも知れません。普段よりも仕掛けるタイミングが少しずれてしまったり、自身が思っている以上に力が入りすぎてタレてしまったり……。気合の入る地元戦で普段通りのレースができずに負けてしまう選手も少なくないのではないでしょうか。

こんな風に他人事のように書いていますが、私は実はとてつもない“アガリ症”なのです。
昔、役者の世界に入ったばかりの頃、初めてセリフのある撮影へいく前に、役者の先輩から「上手い、下手は置いといて、当たり前のことを当たり前の感情で当たり前のように言えればなんとかなるよ」というアドバイスを頂戴したことがあります。レベルの低いアドバイスと思われるかも知れません。でも、緊張する現場で、その当たり前を当たり前のように行うことの難しいこと!
特殊な世界だけではありません。みなさんも経験したことはありませんか?緊張したり、焦ったりすると、普段であれば何でもないことがなぜかできない。何でこんな行動、言動をしてしまったのだろう……と、後から冷静になってみると不思議に思うことが多々あります。心臓に毛が生えている、肝の据わった人ならば話しは別ですけれども、誰もがそういった失敗の経験を持っているのではないでしょうか。

競輪のレースは1日1走。特に男子選手のレースは初日の予選を勝ち上がらなければ上へ進めないレースがほとんどです。どんなに仕上げて調子の良い状態でレースに挑んでも、その1走で負けてしまうと、もうその開催の優勝の目はなくなってしまいます。時間、天候、対戦相手、展開など、自分以外の存在に影響を数多く受けるレースの中で“当たり前”に力を発揮すること。そして、さらにその結果、勝つことがいかに大変なことか、改めて痛感します。
でも、そんな過酷な競輪界でも“当たり前のように”いつも勝ち上がり、“当たり前のように”決勝戦まで勝ち進む選手がいるのも周知の通りです。その強さを“当たり前”と、周りに思わせてしまうまでにはどれほどの努力があるのでしょう。そして、何よりも“勝って当たり前”だったり、“強くて当たり前”と、思われることはどれほどのプレッシャーになるのでしょう。競輪ファンの期待値は声援だけではなく、オッズにも表れるのが特徴。そう、ギャンブルですから、お金を賭けることでファンの熱量はさらに増していくものなのです。強くなればなるほどに、そういったたくさんの重圧を跳ね除け、結果を出していることを考えると、トップであり続ける選手に恐ろしさすら感じます。

そんなトップ選手の肝がどんなだろう?と、想像すると……毛むくじゃらの心臓がどっしり構えて、私を睨みつけそうな気がします。ツルツルで、いつもソワソワしている肝の持ち主の私からすると競輪選手のそんな強さからくる走りに、やっぱり、ドキドキさせられてしまうのです。

【略歴】

木三原さくら(きみはら・さくら)

1989年3月28日生 岐阜県出身

2013年夏に松戸競輪場で
ニコニコ生放送チャリチャンのアシスタントとして競輪デビュー
以降、松戸競輪や平塚競輪のF1、F2を中心に
競輪を自腹購入しながら学んでいく
番組内では「競輪狂」と、呼ばれることもあるほど競輪にドはまり
好きな選手のタイプは徹底先行
好きな買い方は初手から展開を考えて、1着固定のフォーメーション
“おいしいワイド”を探すことも楽しみにしている

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