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2019/10/23

Shinichi Gokan

『SPIRIT OF BOSS』Vol.13

『SPIRIT OF BOSS』Vol.13

Perfecta Naviをご覧の皆様、後閑信一です。
今回はヤマダグリーンドーム前橋で行われた、G1第28回寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメントについて書きたいと思います。

寛仁親王牌は毎年、全日本プロ選手権自転車競技大会で各競技を勝ち抜いて出場権を得た選手たちが優先的に選抜されます。5月に松山競輪場で行われた全プロ競技大会の結果、スプリントは横山尚則(茨城100期)選手、1㎞TTは南潤(和歌山111期)選手、そしてケイリンは山田英明(佐賀89期)選手がそれぞれ優勝し、初日に行われる日本競輪選手会理事長杯の出場権を勝ち取りました。
寛仁親王牌の開催地である地元・群馬からは111期の蕗澤鴻太郎選手が1㎞TTで3位に入賞して特選シード権を勝ち取ると、同じく113期の小林泰生選手も4㎞個人パーシュートで3位に入賞して出場権を獲得!さらに小林泰正選手の叔父にあたる45歳の大ベテラン・小林潤二(群馬75期)選手はエリミネイションで3位に入賞して鉄人ぶりを発揮!『G1タイトルに近い男』木暮安由(群馬92期)選手を筆頭に、地元・群馬勢に期待は集まりました。

初日に目を引いたのは6レースの佐々木龍(神奈川109期)選手と12レースの清水裕友(山口105期)選手です。佐々木選手は残り2周の赤板から先行態勢に入ると、関東2車の吉澤純平(茨城101期)選手―神山雄一郎(栃木61期)選手を打鐘で迎え入れて、絶好とも言える3番手の位置を確保!脚を溜めて息を整えます。最終ホームでは先行する関東勢を山本伸一(京都101期)選手―稲垣裕之(京都86期)選手―内藤宣彦(秋田67期)選手のラインが叩きにいくと、1コーナーで神山選手が山本選手をブロック。その際に神山選手が外帯線を外してしまいました。ライン2車なので仕方のないことだと思いますが、その空いた内のコースを佐々木選手がシビアに突いて、レジェンド・神山選手を躊躇(ちゅうちょ)なく捌きました。この気合いと捌く技術から、お父さん譲り(佐々木龍選手の父は、長きに渡りS級1班に在籍した筋金入りの名マーカー・元人気競輪選手である佐々木龍也さん)のDNAを感じました。これから佐々木選手には先行で脚を作りながら、勝負の時は今回のようにシビアに攻めるなど、自分の色があるレーススタイルを確立して頑張ってもらいたいものです。

そして、度肝を抜かれたのは日本競輪選手会理事長杯12レースの清水選手です!対する近畿ラインは繰り上がった三谷竜生(奈良101期)選手が加わって、南選手―三谷選手-村上博幸(京都86期)選手―村上義弘(京都73期)と、昨年までの近畿の勢力を思い出させる強固な布陣でした。横山選手―平原康多(埼玉87期)選手の関東ラインと清水選手-山田選手のライン、単騎の浅井康太(三重90期)選手が果たして太刀打ちできるのか?という観点で、非常に興味深いところでした。
レースは全開で平原選手を引っ張る横山選手を近畿勢がカマす展開となり、清水選手は後方に置かれて近畿勢の後ろ。最終ホームでは南選手の力が尽きた瞬間に、間髪入れず三谷選手がインから捲り発動!清水選手にとっては万事休すの状態かと思いましたが、捲る近畿勢の上をさらに捲り上げてしまったのです!しかも後ろにマークした山田選手がついていけないほどの加速力で、これには私も驚きました。清水選手は今年初旬、別府G1全日本選抜競輪で落車し、自身初の鎖骨骨折を経験。先の見えない不安の中でも、シッカリと向き合ってきた成果でしょう。復活と、呼べる大きなインパクトを残した清水選手らしい破壊力だったと思います。

2日目は台風で順延となりましたが、108名の選手達は思い思いの調整で1日を過ごしました。ヤマダグリーンドーム前橋は競輪場に選手宿舎が併設されておらず、選手はバスで競輪場とドームを往復するのですが、順延の日は10名が宿舎に残り、98名の選手がドームにやってきました。その内の94名がバンクで自転車に乗り、残りの4名は自転車の整備や雑談などで雰囲気を感じている様子でした。私は自転車に乗らずにいた中川誠一郎(熊本85期)選手と話す機会がありました。ご存知の通り、中川選手は既に今年のG1を2度、優勝しており、年末のKEIRINグランプリの切符を手にしていますから穏やかな笑顔を絶やさずに対応してくれました。

その中川選手は二次予選Bで、新山響平(青森107期)選手の先行を絶体絶命の7番手から捲り切って1着。その勢いはさらに冴え渡り、準決勝12レースでも平原選手、村上義選手、和田真久留(神奈川99期)選手を相手に、打鐘から絶妙なタイミングで仕掛けて圧勝!決勝戦へと駒を進めました。

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