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2019/11/15

Yuji Yamada

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.59

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.59

11月19日からKEIRINグランプリ2019の出場権を懸けた『G1第61回朝日新聞社杯競輪祭』が小倉競輪場で開催されます。今年、最後のタイトル争いとなる開催は昨年と同じく6日制のナイター開催で実施され、前半3日間は全員が予選スタートのポイント制になっているだけに、初日から白熱したレースが展開されると思います。
小倉競輪場は10月のG1寛仁親王牌が開催されたグリーンドーム前橋と同じくドーム競輪場です。軽くて無風の高速バンクですからスピードのある選手に向いています。昨年の傾向としては先行選手が早目からペースを上げ過ぎたこともあり、前半戦は捲りが決まるレースが多くなっていました。その反省から後半戦になってくると、先行選手がペース配分を掴んできて、逃げ粘るレースが増えていったのが印象的です。

ドームにおけるレースでは終盤に脚の引っ掛かり感がなく、ギアに物足りなさを感じることがありますが、ギア倍数には規定があるために規定以上の倍数に上げることはできません。ドームを得意としている選手はスピード回転力が合っているのでしょう。近況の調子が良い選手でもドームでの走りがあまり好調に観えない選手は……本人の調子ウンヌンよりも脚の引っ掛かり感が合っていないのかも知れません。車券を買われる時は“ドームでの走り”に注意して、狙う選手を決めていくというのも一つの手だと思います。

今回の競輪祭の参加メンバーを見て、まず注目したのは昨年のKEIRINグランプリ2018覇者である三谷竜生(奈良101期)選手です。グランプリの出場権を獲得するには競輪祭を優勝するしかありません。今年6月に競技規則一部が変わってから、初手の位置取りがかなり重要になってきています。常に1番車で走れる三谷選手は位置取り有利に進められるのではないでしょうか。

賞金ランキング7位の平原康多(埼玉87期)選手は直前の四日市G3の動きでは、まだ物足りないです。四日市記念が競輪祭の直前ということで、少し身体が重い状態で調整しているのならばピークは競輪祭にくるでしょうし、やはり、競輪祭での動きを観てから判断することが必要です。

9位の松浦悠士(広島98期)選手は、G1寛仁親王牌での走りを観る限り、ドームに不向きではないと思います。直前の松戸F1でも優勝しており、調子も問題なし。優勝に近い選手の1人だと言えるでしょう。

そして、G1優勝に最も近いと思う選手は清水裕友(山口105期)選手です。昨年のこの大会でグランプリ出場を決め、S級S班の仲間入り。寛仁親王牌でも決勝に乗っており、ドームバンクでの成績も悪くなく、ゴールまで踏めている感じがします。今年は賞金ランキングでグランプリ連続出場もほぼ決めていて、それ程のプレッシャーもなく、優勝を狙っていけると思います。

最後に地元・九州地区の中川誠一郎(熊本85期)選手ですが、ナショナルチームメンバーが不参加の今開催ではトップスピードが頭一つ抜けていると思います。元ナショナルチームですからドームが不向きということはないと思いますが、小倉ドームとの相性がイマイチなのか!?競輪祭での決勝進出は1度もありません。今年、G1を2度、優勝している今年の調子を持ってして、どのような走りを披露するのか注目であります。

天候に左右される心配がないドームでありますが、前橋の寛仁親王牌は台風の影響で開催が順延になりました。売り上げにも影響すると思いますので、今開催は無事に6日間が終わることを心底から願っております。

【略歴】

山田 裕仁

山田 裕仁(やまだ・ゆうじ)

1968年6月18日生 岐阜県大垣市出身
1988年5月に向日町競輪場でプロデビュー
競輪学校の同期で東の横綱・神山雄一郎(栃木61期)、西の横綱・吉岡稔真(福岡65期・引退)らと輪界をリード
“帝王”のニックネームで一時代を築いた
2002、2003年の日本選手権競輪(ダービー)連覇などG1タイトルは6つ
KEIRINグランプリ連覇を含む史上最多タイ3度の優勝など通算優勝110回
通算獲得賞金は19億1,782万5,099円。
2018年末、三谷竜生(奈良101期)に抜かれるまでは年間獲得最高賞金額=2億4,434万8,500円の記録を持っていた
自転車競技でも2001年のワールドカップ第3戦(イタリア)で銀メダルを獲得するなどの実績を残した
2014年5月に引退して、現在は競輪評論家として活躍中
また、競走馬のオーナーとしても知られる

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