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2020/01/11

Norikazu Iwai

KEIRINグランプリ2019を終えて

KEIRINグランプリ2019を終えて

競輪界最大のイベントであるKEIRINグランプリ2019が昨年12月30日、立川競輪場で行われ、13年ぶりにグランプリの舞台へ戻ってきた43歳の佐藤慎太郎(福島78期)が栄冠に輝いた。佐藤には失礼だが、まさか43歳の選手が優勝すると思ったファンは多くなかったであろう。裏を返せば、8人の歳下の選手は一体、何をやっていたのだろうか。43歳の最年長選手が勝ってしまう、それも今年は無冠。業界的には凄いことではある。しかし、申し訳ないが、一般的には「競輪はベテランが勝つんだ。若い選手はだらしない」と、映ってしまうかも知れない。

佐藤を否定しているのではない。人気にもなっていた中国勢は何もできずに、結果としては凡走。脇本雄太(福井94期)、新田祐大(福島90期)、平原康多(埼玉87期)は自分のできることをしたと言える。ただ、一番気掛かりだったのは、ある選手が気温について語ったことだ。これには「何を今さら」と、思ってしまう。グランプリ本番までは夜間練習でバンクの感触を確かめられたはずだし、寒さも分かっていたことだろう。それなのに気温やバンクコンディションに言及するのは、プロとして発してはいけない言葉だと考える。これはファンに対しても失礼な話であろう。プロ意識の欠如と、思われても仕方がない。

ファンは暮れの大一番に、夢のある走りを期待する。KEIRINグランプリは中央競馬の有馬記念にならって創設されたと、言われている。しかし、実際のレース内容に夢を感じられなかったのは、筆者だけだろうか?淡々とした流れで、新田が村上博幸(京都86期)と競ったシーン、最終4コーナーを回ってからの平原の強襲。新田と佐藤のゴール前での激しいつばぜり合い。あくまでも個人的な見解ではあるのだが、この3シーンしか見所がなかった。優勝した佐藤に関しては喋りも巧いし、ファンを喜ばせる術を知っている。JKAは佐藤を巧く利用するべきであろう。

肝心の売り上げは目標の120億円には僅かに届かなかったが、119億円以上を売り上げて、数字的には合格点をクリアしたという判断で構わないだろう。昨年と比較しても5.5%増なのだから、さすが立川競輪だ。筆者は30日、友人と本場で勝負した。昨年のグランプリも静岡に足を運んだが、立川の混み具合は半端ではなかった。本場の入りは競輪の全盛期を思わせる程だった。静岡もファンが多かったが、それを遙かに凌ぐ人、人、人。立川の底力を感じられずにはいられなかった。『KEIRINグランプリ=立川』の構図がファンの頭にあったことは事実であろう。

さて、五輪イヤーの今年、競輪界はどうなっていくのだろうか?まだ、売り上げの総額が出ていないので何とも言い難いが、恐らく、他の公営競技の後塵(こうじん)を拝しているのではないだろうか。そう言えば、大晦日のオートレース・SGスーパースター王座決定戦は2万人以上のファンが川口オートレース場に詰めかけたとか。場内は混乱し、グズグズしていたら、車券を買い損ねた人もいたと、人伝で聞いた。オートレースも売り上げは苦戦していると聞くが、これだけのファンが集まるのならば将来的な展望を悲観することはないと思う。

一昔前の正月開催は大いに盛り上がっていた。それこそ東日本エリアで正月開催を取り合っていた程。しかし、この原稿を書いている時に開催しているのは、立川記念と数場のみ。もちろん、ミッドナイト競輪も開催しているが、他競技と比べては開催数が少ない。これには寂しさを感じてしまう。
今年こそは明るい話題が増え、他の競技に負けないくらい前向きな競輪界であって欲しいと、願うばかりである。

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