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2020/02/05

Yuji Yamada

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.64

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.64

今年は子年(ねどし)で、新たなものが形作られていく年回りと、言われています。大相撲初場所では、幕尻西前頭17枚目の徳勝龍が初の幕内最高優勝を果たしました。新しい時代がやってくる予感に、相撲ファンだけでなく、国民も盛り上がりましたね。
新しい時代にふさわしく、競輪界では、初めて早期卒業制度が適用されました。記録会によるタイム等が優秀な選手が文字通り早期に卒業できる制度で、既に117期の2選手がデビューしています。
寺崎浩平(福井)選手は和歌山で先にデビュー戦を迎えました。ダッシュタイプということで捲り志向のレース。先行態勢に入ってからも流し流しで、準決勝ではカマシてきた選手に出られてしまいました。タイムが超一流の域ということで早期卒業しましたが、ファン目線からはこの先、当然のことながら早々にS級へ昇格して、タイトルを狙えるレベルの選手だからこその早期卒業という感覚があるかと。そのような視点からは少々、レースのスケールが小さく、物足りなさを感じる内容でした。
対して、菊池岳仁(長野)選手は岐阜でのデビュー戦でしたが、レースセンスと言うよりは脚力にモノを言わせた豪快な走りでした。早期卒業制度でデビューした選手にS級昇格までは、こういった強引なレースでの勝利を望むのは私だけでしょうか?
「勝てば良い」という結果だけを求めるのは普通に競輪選手養成所を卒業して、デビューする選手たちで良いように思います。早期卒業した2選手は現時点では共に、連勝を伸ばしているので、まずはこのままS級まで特別昇級を果たすことを願っています。


デビュー戦となった岐阜でのA級チャレンジ決勝にて
最終HSからカマシて、後続を大きく引き離しての優勝となった菊池岳仁選手

KEIRINグランプリ2019で盛り上がっていたのはつい先日のような気もしますが、もうKEIRINグランプリ2020の出場予定者が決まります。今年の全日本選抜競輪の開催場は初めてのG1開催を迎える豊橋競輪場です。豊橋競輪場と言えば、強風で直線が長いというイメージです。この強風に打ち勝つ選手は誰なのでしょうか。
地元ホームバンクの深谷知広(愛知96期)選手が不参加なのは中部地区の選手にとっては痛手ですが、個人的には私が現役時代にラインを組んで、一緒に戦ってきた金子貴志(愛知75期)選手に期待しています。ホームバンクでのG1出場は「最初で最後!」の気持ちで頑張っていただきたいです。


地元G1で気合の入る金子貴志選手
昨夏から始めたYouTube『カラフルスタイル』でも豊橋G1全日本選抜競輪をアピール!

また、今回の出場予定選手を見渡すと、今、勢いがあると思えるような目につく選手が見当たりません。やはり、S級S班の選手の中から優勝者が出るのではないかと思える程、各地の開催でS級S班の選手が結果を出しているのが現実です。今回の参加者で一番、若い期である113期の藤根俊貴(岩手)選手、松井宏佑(神奈川)選手、宮本隼輔(山口)選手、黒沢征治(埼玉)選手たちが優勝すると、競輪界にも新しい話題ができて、色々な意味で盛り上がるはず。はい、大きな期待を寄せたいもの。


昨秋、初の特別競輪(松阪G2共同通信社杯)は負傷明けであったが
今開催は満を持して臨む黒沢征治選手

毎年この時期になると、インフルエンザの話題で持ち切りになりますけれども……今年は新しいものが作られていくという年回りなのか!?新型コロナウイルスが猛威を振るっており、死者数、感染者数は日に、日に増加し続けています。
選手は競走に参加すると“缶詰め状態”の団体生活に入ります。インフルエンザもそうですが、その環境は誰かが持ち込めば感染して、すぐ広まりやすいのです。選手1人、1人が日常生活から人が集まる場所に出かける際にはマスクを着用するなどの体調管理に気を配っていただき、健康な状態で開催に参加することが大切です。そして、豊橋でのG1開催が無事終了した時には参加選手の全員が元気な姿で帰宅できることを望んでいます。

【略歴】

山田 裕仁

山田 裕仁(やまだ・ゆうじ)

1968年6月18日生 岐阜県大垣市出身
1988年5月に向日町競輪場でプロデビュー
競輪学校の同期で東の横綱・神山雄一郎(栃木61期)、西の横綱・吉岡稔真(福岡65期・引退)らと輪界をリード
“帝王”のニックネームで一時代を築いた
2002、2003年の日本選手権競輪(ダービー)連覇などG1タイトルは6つ
KEIRINグランプリ連覇を含む史上最多タイ3度の優勝など通算優勝110回
通算獲得賞金は19億1,782万5,099円。
2018年末、三谷竜生(奈良101期)に抜かれるまでは年間獲得最高賞金額=2億4,434万8,500円の記録を持っていた
自転車競技でも2001年のワールドカップ第3戦(イタリア)で銀メダルを獲得するなどの実績を残した
2014年5月に引退して、現在は競輪評論家として活躍中
また、競走馬のオーナーとしても知られる

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