TOP > コラム > “帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.66

コラム

一覧へ戻る

コラム

2020/03/12

P-Navi編集部

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.66

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.66

新型コロナウイルスの感染拡大が止まりません。予防接種も無ければ、治療薬もない現状では、こうなるのは当然の結果だったのかも知れませんね……。
感染者本人が感染していることに気付かずに動き回ることはウイルスをバラまいているのと同じことなので、広まるのも頷けます。健康体の人間も自ら最低限の予防をするためにマスクを着用しようと思っても、マスクが手に入らないようでは何ともなりません。“濃厚接触”と、言われても、感染者自身が感染していると分かっていないので、どうしようもないです。「感染しないためには人と会うな」という究極の結論しか見当たらない状況なのでしょう。各地のイベントは軒並み中止になり、野球や大相撲に競馬などなど、人々の数多くの娯楽までも無観客で行われ、何だか異様な雰囲気に包まれています。

競輪も当然、無観客での開催が続いています。以前から無観客のミッドナイト開催を行っていたため、選手には無観客開催の経験者も多く、違和感はあまり覚えられません。ですが、S級の選手たちは無観客レースを経験していな選手がほとんどで、ファンがいない場所でのレースに寂しい思いをしているのではないでしょうか。
この無観客開催の期間を経験して、各関係者はアレコレと、考えることが多かったことかと思います。無観客で開催するということは車券売り場の従業員が不要になるし、場内警備員の数も通常時に比べたら少なく済むので、人件費は大幅にカットできます。さらに最寄り駅などからの送迎車も要らない、場内イベントを行う必要もなくなります。
記念開催の売り上げは大幅にダウンしてしまっていますが、普通開催での売り上げを見ると、無観客でのネット販売でも充分に利益が出ると考えた方もいるのではないでしょうか。正直に申しますと、私自身も大垣の普通開催で解説をしていた際、そう思ってしまったくらいなのですから……。

とは言え、やはり、現場で生のレースを観てもらうことが競輪の魅力を伝えるには一番です。私が子供の頃に「将来は競輪選手になろう!」と、決意したように、現場には人の心を打つ何かがあると思います。ミッドナイト開催も含め、このまま無観客での開催数が増えていくのであれば、将来、競輪選手を志す人間も少なくなっていくのではないでしょうか。関係者の皆様方には是非、お客様が現場に足を運び、競輪を心の底から楽しめる環境整備に力を注いでいただけるようお願いしたいです。

そして、選手たちにですが、現況にあまり危機感を抱いていない人間が多いように思えます。前検日に取材をすると、新幹線などの公共交通手段を避けて、自動車を利用する選手が増えていたのは事実です。でも、不特定多数の人と接触しながら移動してきた選手の中に、マスク姿の選手はチラホラ。マスクが手に入らないからと、手洗いやうがいをこまめにしている選手の姿もそれ程でも……。新型コロナウイルス対策として無観客での開催は続いていますが、選手の中から感染者が出たらどうなるのでしょうか?選手は開催に参加すれば宿舎生活が始まります。濃厚接触は避けて通れない状態なのです。無観客どころか全国での開催自体が危ぶまれると思いませんか?選手に有給休暇という言葉はありませんよ。選手は日頃からトレーニングして体を鍛えているので、一般の方々より頑強な身体だとは思いますけれども、最悪な状況も想像して、普段以上に選手1人、1人が健康管理に気を配って欲しいもの。

末文になりましたが。
日本のみならず世界中での混乱が1日でも早く落ち着きを取り戻し、通常の開催が行なわれることを心底から願うばかりです。

【略歴】

山田 裕仁

山田 裕仁(やまだ・ゆうじ)

1968年6月18日生 岐阜県大垣市出身
1988年5月に向日町競輪場でプロデビュー
競輪学校の同期で東の横綱・神山雄一郎(栃木61期)、西の横綱・吉岡稔真(福岡65期・引退)らと輪界をリード
“帝王”のニックネームで一時代を築いた
2002、2003年の日本選手権競輪(ダービー)連覇などG1タイトルは6つ
KEIRINグランプリ連覇を含む史上最多タイ3度の優勝など通算優勝110回
通算獲得賞金は19億1,782万5,099円。
2018年末、三谷竜生(奈良101期)に抜かれるまでは年間獲得最高賞金額=2億4,434万8,500円の記録を持っていた
自転車競技でも2001年のワールドカップ第3戦(イタリア)で銀メダルを獲得するなどの実績を残した
2014年5月に引退して、現在は競輪評論家として活躍中
また、競走馬のオーナーとしても知られる

ページの先頭へ

メニューを開く