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2020/03/19

Norikazu Iwai

パンデミックとネット投票

パンデミックとネット投票

遂に、と言うべきか__。
世界保健機構(WHO)が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)を宣言した。米国はトランプ大統領が非常事態を宣言。米国だけでなくヨーロッパ、特にイタリア、フランスでは急速に感染が拡大している。日本でもプロ野球は開幕が延期になり、他の競技でも試合が中止になったりして、各所で大きな影響が出ている。東京マラソン、名古屋ウイメンズマラソンなども一般の参加は見送った形を取って、五輪選考会として行われた次第だ。中央競馬も観客を入れずに開催。公営競技に目を向けると、競輪・オートレース・ボートレース・地方競馬が同じく無観客で場外発売も行わない措置を取っている。

公営競技の中で、最も影響を受けているのは競輪だろう。3月11日までの見込みだった無観客開催を『当面』という言葉に変えて、現在も無観客が続いている。競輪の醍醐味は本場で車券を握り締め、声を張り上げることだと、思っている。それができないとなってくると……。車券はネットや電話投票で購入できるとは言うものの、本場での激しいレースを目の当たりにしてきたファンにとっては物足りない。
それは売り上げを見れば、一目瞭然だ。競輪ファンは他の公営競技ファンに比べ、年齢層が高いと、言われている。地方競馬は無観客にも関わらず、売り上げはそれ程までに影響を受けていない。中には、逆に売れている場もあると、聞いた。ボートレースも影響こそ受けているが、それでも、ファン層が競輪に比べると若いだけに落ち込みは競輪より大きくない。
今の時代、ネット投票が主流だというのは、言わずと知れたことだろう。競馬・ボートレースはそれこそ10年以上前からネットを重要視し、施策を打ち出してきた。逆に、競輪は口では「若い、新しいファン獲得」を謳いながら、現実はどうだったのか?ネット=パソコンやスマホを苦手としている60歳以上のファンに対し、真剣にネット投票を呼びかけてきたのかどうかは疑問である。今になって、ネット投票を前面に押し出しても手遅れであろう。
不思議な現象なのだが、ミッドナイト競輪では1日の売り上げが3億円を超えた場があった。それなのにグレードレース以外の日中開催にはそれがない。一概には言えないが、要するに、ミッドナイト競輪を買うファンと日中開催のファン層が違うということだろう。それだけ日中開催に魅力がないと、言っても過言ではなかろう。

関係団体は今さらながらネット投票のPRをしている。スポーツ紙を見ると、ネット投票のやり方が出ている。しかしながら、これも毎日、掲載されている訳ではないし、単純に「アクセスして下さい」程度になっている。これでは年配のファンはそもそも加入しないはずだ。
よく携帯電話のショップで、年配者がスタッフに操作を聞いている場面を見ることがある。取り扱い説明書に沿って、という考えもあるだろうが……やはり、年配者はそれだけでは理解できないのである。競輪業界もせめて問い合わせがあった場合、電話などで今まで以上に丁寧な説明をすべきだと考える。「どこどこにアクセスして、後は従ってください」の方法を取っているならば、お門違いも甚だしい。
先が見えない新型コロナウイルス。生き残るためには何をすべきか?真剣に考えなければならない。このままだと他の競技に一層、水を開けられてしまう。

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