TOP > コラム > 勝ち方と内容も求められる今後

コラム

一覧へ戻る

コラム

2020/04/09

Norikazu Iwai

勝ち方と内容も求められる今後

勝ち方と内容も求められる今後

スター誕生か?
見方によれば、それも“あり”かも知れない。はたまた、何のことを言っているのだ?と、思っている方々もいることだろう。
日本競輪選手養成所を早期に卒業した寺崎浩平(福井117期)が4月3日の小田原F1で優勝を果たした。今年1月16日にデビューしてから79日という史上最速のS級優勝。それまでは坂井洋(栃木115期)の144日だったのだから、その強さが分かる。また、同じく早期卒業した菊池岳仁(長野117期)は3月の伊東F2の2日目に連勝が止まり、次の平塚F1でも準決勝で敗れている。

さぞや小田原の現場は大賑わいだろうと思いきや、そうでもなかったらしい。知人によれば「勝ち方がセコかった。準決勝も後方からの捲りで3着だったし。勝つには勝ったが、内容が乏しかった」と、手厳しかった。決勝をテレビ観戦していたが、確かに勝負に徹していた印象を受けた。それはそれで良いが、長い目で見た時に、果たしてあれで良かったのか?そう思えてならないのだ。
この開催には村上義弘(京都73期)が参加していた。2月は体調不良で休み、これが復帰3戦目だった。寺崎は準決勝、決勝で村上と連携した訳だが、準決勝は捲って、村上に差され3着。ちなみに1着は曽我圭佑(熊本113期)であったので、この時点でデビューからの連勝は19で止まった。問題は中身、やはり、若手は思い切って先行して貰いたいものだ。決勝こそは先行と、楽しみにしていたが、結果は捲るどころか追い込みだった。S級初優勝、それも史上最速が追い込み優勝では……正直なところガッカリした。

レースの展開は寺崎が一旦、前に出て先行態勢を取ったが、皿屋豊(三重111期)がカマすと、寺崎は突っ張る素振りを見せながらも2番手を確保。展開的にそうなったら、それはそれで良いだろう。しかし、問題はここからだった。2コーナー、最終BSと、いつでも仕掛けることができるのに動かなかった。村上もいつ捲るのかと、構えていたことだろう。あのスピードだったら3番手から遠慮なく捲っても良いように思えたのだが……。
寺崎はマイペース、現代っ子なのだろう。後ろが誰かは関係ない、自分が勝てるタイミングで追い込んだ。プロとしてこれは当然でもあり、立派な走りだとも言える。
だが、競輪はその場限りではないことはファン、選手仲間。そして、本人が一番、分かっていることだろう。決勝に関して言えば、勝負には勝ったが、皿屋の方が先行選手としては大きく見えたものだ。村上が後ろでなくても、タイトルを目指すのであれば、まずは正々堂々としたレースを見せて貰いたかった。そう思ったファンも多かったのでないだろうか。

早期卒業しただけあって、スピードは非凡なものがある。ただ、競輪はスピードだけで勝てるものではない。駆け引きやラインがあってのことだ。引き上げてきた検車場は不思議な空気に包まれていたという。村上のコメントを聞きたいところだが、残念ながらそれはなかった。

史上最速Vは偉業だ。これによって寺崎は一段と、注目される。この次は勝ち方、内容まで要求されることだろう。それをキチンと、クリアしていくことができてから“スター誕生”と、なる訳だが、彼自身はどう思うのか?
レーススタイルは人それぞれで、何が正解なのかは分からない。ただ、一つ言えるのは、これだけの素質があるのだから勝つこと以上に今しかできないことを長い目で見て、考えていただきたい。業界の救世主になれるかは次走以後の内容に懸かっている。

ページの先頭へ

メニューを開く