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2020/07/22

Yuji Yamada

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.73

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.73

緊急事態宣言が解除され、約2ヶ月が経ちました。
しかし、陽性者数が徐々に増加傾向にあると、思っているのは私だけでしょうか!?

先日、私の後輩(現役選手)が、とある競輪場の開催を欠場していたので、ケガでもしたのか?と、心配で電話を入れてみました。すると「子供の通う学校で陽性者が出たため、うちの子供もPCR検査を受けたのですが、その検査結果が前検日に間に合わなかったので、念のために欠場しました」ということでした。もし、その選手が参加した後に子供から陽性結果が出ていたら、同居している親は濃厚接触者扱いになります。さらに感染していたら、その競輪場の参加者達も濃厚接触者扱いになってしまいます。

感染拡大を防止するという観点では当然の判断だと思いますが、競輪選手本人としては健康に異常を感じていないのに欠場するということは非常に辛い判断だったはずに違いないと、私は思います。なぜならば競輪選手には有給休暇などありませんし、月の斡旋が2本だと仮定したら、そのうちの1本を欠場するということは半月休んだことと同じ意味合いになるからです。地区内斡旋になり、斡旋本数の平均は月2本を切っているということも聞いています。ということは月1本の可能性まである訳ですし、このような事態に直面した時、思い切って欠場できますか?色々と、想像するだけでも恐ろしい事案だったと思います。

『競輪参加中におけるクラスター』__これが起これば競輪は確実に開催中止でしょう。これだけは絶対に避けなければならないと、もう1度、選手のみなさん、関係者の方々には気を引き締めていただきたいです。

先日、いわき平競輪場で行われたG2サマーナイトフェスティバルは清水裕友(山口105期)選手の優勝、F2ガールズケイリンフェスティバルは高木真備(東京106期)選手が優勝を飾り、売り上げも目標を大幅に上回る結果で、無事に幕を閉じました。遅ればせながらではありますけれども、いつものように開催を振り返っておきたいと思います。
まずは初日特選。清水選手は松本貴治(愛媛111期)選手、松浦悠士(広島98期)選手の3番手回り。松本選手が先行し、バックで番手捲りした松浦選手をゴール前で差し切っての1着スタートでした。
2日目の準決勝は松本選手の番手。松本選手が主導権を握るも脇本雄太(福井94期)選手に捲られてしまう。清水選手はその3番手に切り替えて、ゴール前で差し込むも脇本選手の番手から抜け出した稲川翔(大阪90期)選手には届かずの2着。
決勝戦は松浦選手の番手で、松浦選手が打鐘過ぎにカマシ先行。先行の番手回り、新田祐大(福島90期)選手に一旦は捲られてしまいますが、新田選手の番手に切り替えると、差し脚を伸ばして優勝。

今回の清水選手は3日間ともラインの先頭ではなかったため、自らレースを運ぶ機会はありませんでした。6月のG1高松宮記念杯では調子が悪く見えていたのですが、自力戦の好不調を判断することは難しい内容でした。今回も松浦選手の後位からの優勝になった訳ですが、お互いを信じて走っているコンビに違いありません。車券を買うファンからしても、このコンビは後ろを回る選手から2着になる相手探しで良い訳ですから信用度がかなり高いコンビでしょう。
前回のビッグレース、G1高松宮記念杯で完全優勝した脇本選手は最終日こそ1着でしたが、今開催はあまり良いところがありませんでした。疲れが残っていたのだと思いますが、宮杯の強いレース内容からすると、全く別人の走り。しかし、これで脇本選手も機械ではなく、人間なのだと、思った方も多かったのではないでしょうか。
改めて競輪とは「強い選手が勝つのではなく、勝った選手が強い」のだと、感じさせられたシリーズでした。

【略歴】

山田 裕仁

山田 裕仁(やまだ・ゆうじ)

1968年6月18日生 岐阜県大垣市出身
1988年5月に向日町競輪場でプロデビュー
競輪学校の同期で東の横綱・神山雄一郎(栃木61期)、西の横綱・吉岡稔真(福岡65期・引退)らと輪界をリード
“帝王”のニックネームで一時代を築いた
2002、2003年の日本選手権競輪(ダービー)連覇などG1タイトルは6つ
KEIRINグランプリ連覇を含む史上最多タイ3度の優勝など通算優勝110回
通算獲得賞金は19億1,782万5,099円。
2018年末、三谷竜生(奈良101期)に抜かれるまでは年間獲得最高賞金額=2億4,434万8,500円の記録を持っていた
自転車競技でも2001年のワールドカップ第3戦(イタリア)で銀メダルを獲得するなどの実績を残した
2014年5月に引退して、現在は競輪評論家として活躍中
また、競走馬のオーナーとしても知られる

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