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2020/10/09

Yuji Yamada

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.78

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.78

10月に入り、ミッドナイト開催は1番車から競走得点上位順に選手を並べるようになりました。7車立てで、当たりやすいミッドナイトを内枠から順に得点上位者にすることで、さらに分かりやすくするためなのでしょうか? はて!?「1番車にそのレースの最高持ち点の選手を入れて欲しい」。それは私が現役選手の頃、もう何十年も前から言ってきたことです。
なぜ今頃?私が物申していた頃はレースの流れで、前受けすると不利になる展開が多かったため、前受けを嫌ってスタート牽制になり、再発走になるレースが多発していました。その結果、次のレースまでの間隔が短くなることに。イコール車券の発売時間が短くなります。これが車券売り上げの減少になると考えられ、スタート牽制や再発走をなくすため、選手への罰則強化に走ったのです。現場で走っている選手側にしてみれば事故点をつけられる罰則強化されるよりもスタートを取らなければならないルールにして欲しい。そのため、内枠に入った点数最上位者がスタート牽制になった場合は受けて立つレースをすれば良いと、ズーッと、陳情していました。

しかし、上から返ってきた答えは「ギャンブルだから特定の人に不利になるようなルールにできない」でした。特定の人に不利になる!?内枠に入ればスタートを取るにはかなり有利になるのではないか?しかも番組屋の勝手な采配で内枠にして貰えるのです。納得するのは難しかったですけれども、これ以上、ただの選手ではどうすることもできません。選手のワガママを聞いてくれと、言っている訳ではなく、現場で走っている選手の意見も参考にして貰える体制が必要だと、当時から思っていました。選手会としての機能に疑問を持っていたことを今回の制度改革で思い出しました。
上に立つ者の考えが必ずしも正解だとは限りません。選手1人、1人が「正義」は何なのかを考え、語ることができるようになると、もっと早く、良い方向性を見つけることができるような気がしています。

今月は前橋競輪場にてG1寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメントが開催されます。 KEIRINグランプリ2020出場に向けて、残りのG1はこの寛仁親王牌と競輪祭の2大会だけになりました。しかし、今年は新型コロナウイルスの感染拡大により開催中止になる場もあって、選手の斡旋本数に不公平感がある中、例年通りの賞金ランキングでグランプリ出場者が選出されます。出走回数が10回以上も違えば、単純に斡旋本数は3本も違う訳です。 中には悪質な失格による斡旋停止の処分を受けている選手もいるのに、開催中止場の斡旋を貰っていて出走ができなかった選手と同等の扱いで、選手も釈然としないのではないでしょうか。 

10月にもなると、グランプリ出場を狙っている選手はチャンスとなるビッグレースでの好成績のみを考えているでしょうから(優勝ならば確定、賞金も高額なためランキングを上げるチャンス)今大会も初日から白熱したレースが展開されることが予想されます。先月の伊東温泉競輪場で開催されたG2共同通信社杯も周長333mという短走路でしたが、今回の前橋競輪場も周長335mの短走路に加えて、室内ということで風の影響がないため、ますますスピード対決に拍車が掛かることでしょう。
G2共同通信社杯の結果は「競輪」対「ケイリン」で、「競輪」が勝ったと表現しましたが、今回はレース形態として「ケイリン」が勝利するような気がしています。
今開催もナショナルチームで活動している選手による世界のスピードを。そして、ラインの結束力とレース運びの巧さで対抗するレースを是非、楽しんでいただきたいです。

【略歴】

山田 裕仁

山田 裕仁(やまだ・ゆうじ)

1968年6月18日生 岐阜県大垣市出身
1988年5月に向日町競輪場でプロデビュー
競輪学校の同期で東の横綱・神山雄一郎(栃木61期)、西の横綱・吉岡稔真(福岡65期・引退)らと輪界をリード
“帝王”のニックネームで一時代を築いた
2002、2003年の日本選手権競輪(ダービー)連覇などG1タイトルは6つ
KEIRINグランプリ連覇を含む史上最多タイ3度の優勝など通算優勝110回
通算獲得賞金は19億1,782万5,099円。
2018年末、三谷竜生(奈良101期)に抜かれるまでは年間獲得最高賞金額=2億4,434万8,500円の記録を持っていた
自転車競技でも2001年のワールドカップ第3戦(イタリア)で銀メダルを獲得するなどの実績を残した
2014年5月に引退して、現在は競輪評論家として活躍中
また、競走馬のオーナーとしても知られる

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