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2021/09/09

Norikazu Iwai

脇本雄太の一強時代に突入か

脇本雄太の一強時代に突入か

ごくごく当たり前の言葉だが、この強さは尋常ではない。異次元だとか色々な言葉はあるが、何と表現したら良いのだろう。それだけ今の脇本雄太は、「敵なし」ということだ。
8月8日に幕を閉じた東京五輪。脇本はケイリン競技で準決勝敗退し、メダル獲得を逃した。しかし翌日、いわき平競輪場のG1オールスター競輪に参戦すると、当たり前のように決勝進出。まさに怪物であろう。中野浩一、井上茂徳、滝澤正光、神山雄一郎、吉岡稔真の全盛時より強いのではないかとも感じる。

続く向日町記念も圧巻だった。特選、二次予選、準決勝、決勝と手がつけられなかった。捲り、逃げ、捲り、逃げの4連勝。先行の場合は徐々にペースを上げていくのでマークする選手も大丈夫かと思いきや、離れてしまう。ネット観戦では分からないスピード感があったのだろう。決勝は前を取って、そのまま突っ張り先行。正直、2番手の村上博幸がゴール前で差すのではないかと思っていた。欲深な筆者は、2車単で村上博が差す方で勝負していたからだ。しかしながら、結果はそのまま。差せなかった村上博が弱いのではなく、脇本が強すぎた。逆に言えば、村上博は最低限のことはできたのではないだろうか? 地元開催の中、京都勢の中から勝ち上がったのは村上博だけ。相当なプレッシャーもあったはずだ。
脇本の一強が、今年は続くだろう。いや、来年になっても続くかもしれない。ただ物書きは、穿った見方をしてしまう。脇本は東京五輪を最後にナショナルチームを離れた。現在の住まいは伊豆だが、福井に戻るのだろうか? 深谷知広はパリ五輪を見据えて静岡に移籍している。脇本はこのまま伊豆に拠点をおく手もあろうが、その場合のトレーニングはどうなっていくのか。現在の脇本の強さは、ナショナルチームのトレーニング効果で作られたと感じている。今はその貯金、もちろん彼の能力の高さを加えたものだが、同じようなトレーニングを続けられるなら問題はないだろう。だが、やはり環境は大事である。その環境をいかに脇本が作っていくかだと思っている。

ブノワ・ベトゥヘッドコーチにも少し触れたい。リオ五輪が終わってから5年。彼の指導の下、確かに日本チームは変わった。世界選手権でメダルを獲るのは普通に思えたし、ワールドカップもしかりだ。しかし、五輪本番ではメダル「ゼロ」の結果に終わった。リオ五輪では中国ナショナルチームを率い、結果を残し「メダル請負人」の異名を持つ。だが、東京五輪では結果を残すことができなかった。ブノアの指導が日本にもたらした功績は、言葉では言い尽くせないほどある。それでも、結果は結果。他の競技を見ても、結果を残せなかった監督が交代になるケースは少なくない。プロ野球でもシーズンオフになれば、結果を残せなかった監督は代わる。サッカーの世界はもっと激しく交代劇が繰り広げられている。果たして、JCFはどう考えているのだろうか? このままの体制でパリを目指すのか? 賛否はあるだろう。しかし筆者は、この世界、特に五輪を考えれば、結果がすべてだと思ってしまうのだが__。

Text/Norikazu Iwai

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