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2022/06/09

岩井範一

好転した京都向日町競輪場

好転した京都向日町競輪場

つい先日、某新聞で公営ギャンブルが活況だという記事を見つけた。そこで書かれていたのが、京都・向日町競輪場のことだった。向日町と言えば、村上義弘・博幸兄弟を中心として、人気、実力共にあるレーサーが多い。しかしながら売り上げは低迷し、何度か廃止が議論された過去がある。何とか廃止を回避すべく、京都所属の選手は、最寄り駅から競輪場までの道で食に関するイベントを行ったり、努力を続けていた。
世間では廃止やむなしの声があがっていたことも事実だ。だが、どこで好転するかわからない。新型コロナウイルスの感染が拡大し、競輪も開催を見送ったり、無観客で開催した。当初はファン離れが心配されたが、逆にネット投票の割合が増加した。これは向日町競輪だけでなく、全国の競輪場でも見られた現象だ。コロナが怖くて、人混みの中には入りたくない。しかし、車券は買いたい。そんなファン心理なのだろう。あっという間にネット投票の売り上げが増えた。民間のポータルサイトも複数あり、それぞれに特徴がある。ひとつだけでなく、いくつかの選択肢があったのも良かったのであろう。
昨年度の売り上げを考えれば、京都府への繰り出しが十分に可能になったと言える。ネット投票もそうだが、ミッドナイト競輪を開催するようになったのも売り上げ増に繋がった。21時頃から始まるミッドナイト競輪は、当初、うまくいくのか分からなかった。だが、今や売り上げは昼間開催を上回るほどの盛況になった。ミッドナイト競輪はネット投票だけなので、まず、場内の人件費がかからない。要するに、経費負担が相当、軽いというわけだ。向日町だけでなく、廃止が議論された競輪場が復活した話はいくつもある。ネット投票が大きいだろう。
売り上げが増加することは嬉しい限りだが、その反面、競輪場に足を運ぶファンが少なくなったことも事実であろう。昭和世代の筆者にしては寂しく思う。金網越しに絶叫を繰り返すことで、それがひとつのストレス発散にも繋がっていた。車券は外れても、どこか気持ちは良かった。競輪だけでなく、他のプロスポーツでも、選手は「ファンの声援が大きかった」と、インタビューで必ずといっていいほど答えている。やはり生の興奮を知る身としては、ネット越しでは物足りない。だから仕事の都合さえつけば、筆者は競輪場に足を運ぶ。
だからこそ残念なのは、競輪場の入場者数が減っていることだ。ネット投票が好調だから、廃止になる競輪場がなくなるのは、非常に嬉しく思うし、良いことだと断言できる。ただそれだけではなく、実際に競輪場に足を運んでくれるファンを増やすことも重要だ。
勢いが戻りつつある今だからこそ、関係者には生観戦の勧めもアピールしてもらいたい。

Text/Norikazu Iwai

Photo/Perfecta Navi編集部

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