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2023/05/24

木三原さくら

恋して競輪ハンター

恋して競輪ハンター

木三原さくら「恋して競輪ハンター」133 Hunting

5月2日から6日間にわたって平塚競輪で行われた第77回日本選手権競輪(G1)。私も6日間、現地から生配信に出演しました。
大きな開催の本場は、KEIRINグランプリ2022以来。グランプリでは、久しぶりにたくさんのお客さんにご来場いただき、その時は、その喧騒に飲まれた感覚がありました。
私が初めてG1を生で見たのは、小倉の競輪祭。決勝戦が始まる前から、涙が出たのを覚えています。選手はもちろん、ファンの想いもワッと押し寄せて、場内の空気の密度が高まっていくあの感覚は、初めての体験でした。

コロナ禍になり、またチャリチャンの立ち位置も変わりつつあるなかで、G1の放送を担当することも減った昨年。そのような中でのグランプリで、完全に油断していたと言いましょうか。スタジオ裏の扉が開いた瞬間に流れ込んできた場内の空気に、一気に飲まれて、心が終始ざわざわとしていました。

それから、4カ月。今回のダービーは、しっかり心の準備をして挑みました。たくさんのお客さんのざわめきにも飲まれることなく、むしろ場内を楽しむくらいの気持ちの余裕もありました。
でも、やっぱり重い、分厚い。特別競輪での、その感覚は変わりません。「G1最高峰」日本選手権競輪を表す言葉自体も、重厚感がありますよね。6日間の激戦を見ていくと、格式あるダービー、そこへかける選手やファンの想いが心に蓄積され、グッと歯を食いしばって油断しないようにしていないと、その重さに、分厚さに飲み込まれそうになります。(あくまで私個人の感覚です。平塚競輪はたくさんのイベントが盛りだくさんで、家族連れや友達同士、競輪初心者の方でもライトな感覚で来て、楽しんでもらえる競輪場ですので、みなさん気軽にご来場ください!)

そのように緊張感を切らさず、踏ん張りながら見届けた、ダービー決勝。
大雨が降る中、優勝したのは岐阜の山口拳矢選手。初のG1決勝で、初タイトル「ダービー王」の称号を獲得しました。
なんて力強く、軽やかなのだろう__。
雨がしたたる表彰式を見ながら、そう思いました。

山口拳矢

山口選手は、いつだって話題を集めてきました。父に山口幸二元選手を持つことや、デビュー1年後の2021年にはグランプリ次点となるなど、選手になる前、なってからも常に注目を集めてきた選手という印象です。
通常では、それだけ注目を集めていけば、心身共に緊張したり、かたくなったりするのでは?と想像するのですが、山口選手には、そのようなネガティブなかたさや重さがないように感じます。
優勝インタビューのお父様(と、あえて書きます)山口幸二さんの言葉に、私は泣きましたが、本人の山口選手は言葉をしっかり受け止めながらも、その爽やかさ軽やかさを失うことはありませんでした。

風薫る5月。
みずみずしく若葉が芽吹き、そして一気に色濃く育つこの季節。力強く、生命力に満ちながらも、爽やかに吹くその風のように、山口選手の走りは、ダービーの重みや厚みに勝手に飲まれないようにと踏ん張る私の横を、軽やかに吹き抜けていきました。その軽やかさ、実に羨ましい! そして美しい。そう感じました。

新ダービー王の誕生が、競輪界に新たな旋風を巻き起こすのでしょうか。はじまりの季節を経てやってくるのは、あつい夏! 山口選手が巻き起こした風が、競輪界にどんな嵐を起こすのか。次なる戦いが楽しみです!

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【恋して競輪ハンター・過去コラム】
132Hunting「偏食しない自由な車券」
131Hunting「感謝の10周年」
130Hunting「勝負の気配」
129Hunting「平塚の春よ来い!」
128Hunting「新人でなくなる前に」
127Hunting「10年目の奈良記念」
126Hunting「脱タテ目!」
125Hunting「最恐の走りに震えた和歌山記念」
124Hunting「泣けるオッズ」
123Hunting「清水裕友が好きだ!」

【略歴】

木三原さくら(きみはら・さくら)

1989年3月28日生 岐阜県出身

2013年夏に松戸競輪場で
ニコニコ生放送チャリチャンのアシスタントとして競輪デビュー。
以降、松戸競輪や平塚競輪のF1、F2を中心に競輪を自腹購入しながら学んでいく。
番組内では「競輪狂」と、呼ばれることもあるほど競輪にドはまり。
好きな選手のタイプは徹底先行!
好きな買い方は初手から展開を考えて、1着固定のフォーメーション。
“おいしいワイド”を探すことも楽しみにしている。

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