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2018/01/23

Yuji Yamada

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.16

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.16

競輪選手にとって心が休まる時はいつなのでしょうか? それは引退した時なのでしょうか。
年が明けると年賀状や挨拶回りで”おめでとうございます”の言葉を交わします。現役の選手の中には、本当におめでたいのか?と思っている人間がいるのも事実でしょう。それは年末にグランプリを走り、いつもとは異なる特別な空気の中で緊張もするでしょう。また、相当な集中力も使うので、開催後は身も心もグッタリします。その心身の疲れを癒す時間はほんの数日間。優勝した選手でも喜んでいられるのも数日間だけです。そう、シーズンオフのない競輪選手たちはまた新たにグランプリ出場メンバーの中に入るための”長い戦い”がすぐに始まってしまうからです。 1度グランプリの雰囲気を味わった選手は必ずまたこの舞台に帰ってきたいと思います。そんな素敵な舞台であることに間違いはありません。2017年グランプリチャンピオンの浅井康太選手(三重90期)は今年1年間、多少なりとも番組に恵まれた感で走れるでしょうし、SS級にいるだけでも他の選手よりは有利な部分もあるかと。それでも、全ての選手が年明けから同じスタートラインに立つのが競輪の世界なのです。

このスタート間もない1月、目立つのは平原康多選手(埼玉87期)です。昨年のグランプリ優勝を目指して練習してきた成果が出ているのか、2017年後半の不調が嘘だったかのように復調。年頭の立川記念における優勝で開幕ダッシュを決め、本来の力を存分に見せてくれました。続く地元の大宮記念の決勝こそ5着と、残念な結果ではありましたげ、勝ち上がり方(3連勝)を観ていても今年も活躍が期待できますね。
新田祐大選手(福島90期)は今年、まだ一走もしていませんけれども、前有利と言われたグランプリで3着まで捲り上げてきた脚を観る限りは脚力的には頭一つ抜けている感。この新田選手を追走できる福島勢、北日本勢は大きなアドバンテージになります。
近畿勢はSSとなった三谷竜生選手(奈良101期)の完全復調。そして、先行して勝てる脇本雄太選手(福井94期)の活躍が鍵となるでしょう。これらのことからも今年の前半戦の主力どころの戦いは昨年とあまり変わらない流れでいくのではないでしょうか。

現在の競輪界は自力選手の強い選手が多い地区が強くなる、活躍できる傾向が強いことが分かりますよね。後半戦の特別競輪では、全プロの自転車競技の結果で出場できる寬仁親王杯、ファン投票によるオールスターがあります。今年こそ、このような舞台での若い選手たちの活躍は必須であり、ファンの方も喜べるようにと願っています。

もう既に111期の選手達がS級に特別昇級してきています。和歌山記念で優出した南潤選手(和歌山111期)の走りはルーキーらしからぬものでしたよね。
競輪ファンのみなさんには、こういう若手選手たちが全体のレベルを底上げしてくれることを期待しながら、今年の前半戦を観ていただきたいものです。
1場所、1場所を走るごとに若手選手自身が成長を実感。また、観ているファンの方もそれを感じることができれば、2018年の競輪界は待望の新旧交代が進んでいくことでしょう。

【略歴】

山田 裕仁

山田 裕仁(やまだ・ゆうじ)

1968年6月18日生 岐阜県大垣市出身
1988年5月に向日町競輪場でプロデビュー
競輪学校の同期で東の横綱・神山雄一郎(栃木61期)、西の横綱・吉岡稔真(福岡65期・引退)らと輪界をリード
“帝王”のニックネームで一時代を築いた
2002、2003年の日本選手権競輪(ダービー)連覇などG1タイトルは6つ
KEIRINグランプリ連覇を含む史上最多タイ3度の優勝など通算優勝110回
通算獲得賞金は19億1,782万5,099円。
2002年に記録した年間最高賞金2億4,434万8,500円はいまだに破られていない
自転車競技でも2001年のワールドカップ第3戦(イタリア)で銀メダルを獲得するなどの実績を残した
2014年5月に引退して、現在は競輪評論家として活躍中
また、競走馬のオーナーとしても知られる

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