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2017/10/28

Go Otani

エッセイ「競輪場の在る街」Vol.6〜名古屋

エッセイ「競輪場の在る街」Vol.6〜名古屋

「今まで食べたもので一番辛(から)かったものは何か?」
そんな質問をされたら、一瞬、悩んでから“味仙の台湾ラーメン”という答えを出すだろう。

初めての名古屋出張、仕事が一段落した解放感に包まれたこともあり
「今晩、このまま名古屋に泊まるのですが、何かお薦めの食事はありますか?」と、クライアントに尋ねたところ
「味仙???」
「かなぁ!?」
複数の人が目配せをしながらボソボソ言っている。
「えっ、なんですか?ミセンってところは美味しいんですか?」
私の問いかけにも
「まぁ、特にお薦めってわけではないですが」
______何やら微妙な反応。

「そうですね、名古屋の記念に1回くらい行っておいてもいいかもって、感じですね。是非、“味仙の台湾ラーメン”を食べてみて下さい」
最終的に、そのように言われたので
「じゃあ、思い出作りにいってみます」と、私は返して、クライアントたちと別れたのである。
ホテルがたまたま千種駅前だったこともあり、味仙がある今池まではフラフラ歩いていった。今池界隈は素敵な雰囲気の街なので、楽しい散策になった。

ただ……“味仙の台湾ラーメン”は結論として、次の日の仕事に(肉体的にも精神的にも)影響するくらい辛かった。
前日、“味仙の台湾ラーメン”を薦めてくれた人にも会ったので
「次の日に仕事があるって分かっていて、よく薦めましたよねぇ」
第一声で皮肉半分、冗談半分で言うと
「でも、美味しかったでしょ?」
笑顔で言われたので、そこは素直に認めるしかなかった。

その後、何度か名古屋出張はあったが、今池の近くに宿を取ることがなく、“味仙の台湾ラーメン”は1度きりの経験になってしまっている。
しかし、つい最近、名古屋に出張するという友人がいた。しかも名古屋に泊まりだというから
「絶対に食べてみて。少々、ホテルが遠くても行ってみる価値はあるから」
私が熱心に薦めると、友人はすぐにスマホを取り出して“味仙の台湾ラーメン”を調べ始めた。うん、そのあたりが何も調べなかった私とは決定的に違うところだ。
「辛いってことか」
リサーチ結果も出たようで、友人はあまり気乗りしていない感じだ。
「確かに辛い。でも、ここまで辛いと、辛いことさえも忘れる。それが旨味に昇華する」
私はなんとか適当な力説に徹したので
「じゃあ、まぁ、行ってみるわ」と、友人は“味仙の台湾ラーメン”を食べてくることを渋々!?約束したのである。

《約束通りに食べたけど、次の日に仕事がなくて良かったよ》
後日、名古屋出張を終えた友人からメールが届いた。

《仕事がなかったのは残念だったな。“味仙の台湾ラーメン”を食べてきたって言ったら、俺は仕事がうまくいったんだけどね》
手短に、友人へそう返信した次第である。

Text・Photo/Go Otani

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