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2017/09/09

Norikazu Iwai

世代交代

世代交代

サッカーのワールドカップアジア最終予選で、日本は6大会連続で本戦出場を決めた。今まで分が悪かったオーストラリアを相手に完勝。当然のことながら、翌日のスポーツ紙はこの話題を大きく取り上げた。そこで目に付いたのが“世代交代”という言葉だ。サッカーファンでなくても恐らくは知っている本田圭佑、香川真司といった名前が記事にならなかった。記事にならなかったというのは語弊があるが、ヒーロー的な扱いではなく、出番がなかったことに対して、“世代交代”の象徴として扱われた。キャリアを積んだベテランは、チームになくてはならない存在だろう。しかし、いつまでもベテランに頼っていては、さらなる高みは望めないのが現実だ。

“世代交代”を競輪界に当てはめてみよう。そう思って考えたが、頭に浮かんでくる選手がいなかった。今年の日本選手権で優勝した三谷竜生はその後、ケガもあったりで正直なところパ筆頭とは言い難い。つい先日のG3向日町も準決勝で敗退してしまっている。3月のウイナーズカップを制した郡司浩平も同じだろう。当時、郡司のグランプリ出場はほぼ決定と言った関係者は多かった。だが、現在の賞金ランクは9位。ギリギリと言うべきか、残すG1レース2つ(寛仁親王牌・競輪祭)の勝者が加われば、圏外となってしまう。原田研太朗、竹内雄作といった面々もいいところまではいくが、タイトルとなると程遠い。あの深谷知広にしてもだ。

武田豊樹、村上義弘、稲垣裕之が40代。平原康多、渡辺一成が30代。S級S班9人の中に20代は1人もいない。一番若くても新田祐大の31歳。一般にアスリートのピークは27〜8歳と言われる。最近はどの分野でも科学的なトレーニングが主流になり、ピークの年齢はもう少し上がっている。それにしても競輪界はピーク年齢が高すぎる。間違いのないように言うが、決して40代の選手が健在でいるのがいけないとは言っていない。彼らは肉体を維持するだけでなく、進化させようと厳しいトレーニングを積んでいるのだから。情けないのが20代の若手である。それこそ結婚が早ければ、親子といっても言いほど年が離れている相手に歯が立たない。他の競技なら考えられないことである。年寄りが若者を相手に奮闘するといった話しは、日本人好みかもしれないが、そんな感傷にひたるような時代ではない。個人的な考えを言わせてもらえば、今の若手には欲がない。競輪選手になる理由の一つとして、昔は高収入が真っ先に挙げられた。浜田省吾の代表曲『MONEY』ではないが、大金を稼いでベンツに乗るのがステータスでもあった。それが今の若手にはないような気がしてならない。ある程度の金額を稼げばそれでいい。競輪場の選手駐車場といえば、高級外車の見本市だった。それが今は実用性に重きを置く車が圧倒的だ。それこそ、そこらの街中を走っている車ばかり。

欲は誰にもあるが、その質が変わってきているのだろう。1億円のマンションを買わなくても、3,000万円のマンションで十分というように。大豪邸に高級車、そのためにガムシャラに走り、稼いだ。だからレースも迫力があり、飽きることはなかった。競輪の人気がなくなり、売り上げも低迷。その一つの要因が若手の持つ意識の違いになっていると考えられる。世代交代は果たしていつになるのか?このまま時間が進めば、世代交代などという言葉は死語になるだろう。若手の持つ意識が変わらない限り、競輪業界の明日はない。

Text/Norikazu Iwai
Photo/Perfecta Navi・Joe Shimajiri

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