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競輪

2017/10/19

Joe Shimajiri

千葉G3(運営総括)

千葉G3(運営総括)

500バンクに別れを告げて、屋内型250木製バンクへ生まれ変わる千葉競輪場。完成予定は東京五輪が開催された後の2020年秋を目標にしている。ここには五輪で自転車競技に関心を抱いた層を取り込みたいという狙いがある。そして、千葉市長・熊谷俊人の語る「千葉市にとっても、競輪界にとっても新たなチャレンジ」に間違いはない。ただ、これに伴って何かしらの犠牲も払うことも忘れてはならない。

分かりやすいところでは昔ながらの味わい深い場内の売店で働く“お母さんたち”がそれに該当するだろう。話しを伺うと「改修なんかしなくて良いのに。ズーッと、ここで働いてきたんだから。これからどうしようかしらねぇ?」という答えが一様に返ってくる。そこにはまず現実的な収入面という問題もあるだろうし、多くの“お母さんたち”が新たな職を探すのは簡単とは思えない。それに “お母さんたち”にとっては千葉競輪場の売店で働いてきた誇り、働ける楽しみというのが大袈裟に言うならば生き甲斐でもあり、アイデンティティーでもあったのだ。新しい250バンクが完成した時に“お母さんたち”が今と同じ条件で働ける保証もなければ、恐らく、システマティックに変貌するであろう売店に“お母さんたち”の需要はないと思うのが妥当である。

千葉競輪場をホーム(練習場)としてきた選手たちも悩みは尽きない。早いと年明けから解体作業は始まるのだが、練習場所確保の目処が立っていない選手が多い。
「街道練習中心になって、あとはジムでウェートトレーニングになりますかね」
「松戸は同じ千葉県内だけど、道路事情で通うのが大変。取手か?川崎か?になるかも知れない」
中には「千葉に所属は残すんだけど、引っ越す可能性もありますよね。1年中、斡旋で全国各地の競輪場を回っているんだから、家はどこでも同じ」という声も。ただ、この選択は現在、賃貸住宅住まいで単身の選手がほとんど。既に千葉競輪場近辺に持ち家があり、家族や子供の学校問題を考える選手はなかなか踏ん切りが付かない。新バンク完成までの期間限定で単身赴任的な生活も可能だろうが、そうなると金銭的負担増や、支えてくれる家族との時間が減るという現実を受け入れなければならない。

前へ進むためには、切り捨てるものも出てくる。胸が痛むところではあるが、これは古今東西、不変なのだ。競輪場の廃止論まで出ていたところで、250バンク改修という方向性で進んだことは競輪に携わる関係者を安心させるものであった。だが、急展開ゆえに見逃してしまった側面もある。だからこそ廃止にならずに存続となった新生・千葉250バンクは希望に満ちたもので、なおかつ実績も伴わなければならない。同様の問題を抱えている競輪場も多いだけに「作り直しました、新しくスタートします」だけで済まされない責任があるのだから。

Text & Photo/Joe Shimajiri

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