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競輪

2017/11/18

Joe Shimajiri

競輪ドキュメント第3回/小林莉子(東京102期)

競輪ドキュメント第3回/小林莉子(東京102期)

落車負傷で学べたこと

落車した瞬間、左肩付近から“ゴリッ”という音がした。最初は肩が外れたかなと、思っていたが、鎖骨が盛り上がって動いていることに気付く。尚、このレースの車券人気は落車した小林と尾崎に、梶田舞(栃木104期)であった。結果、梶田は1着だったが、小林と尾崎が絡まなかったので3連単は10万円近い高配当に。鎖骨が折れたというショックと共に、車券を買ってくれていたお客さんに申し訳ない気持ちで胸が詰まる。
「今年はもう無理。治療に専念、ノンビリ休もう」
レース直後、小林の偽らざる心境である。だが、1ヶ月後、いわき平でのオールスター・アルテミス賞レース(ファン投票選出)を控えていたこともあり、SNSを中心に信じられないくらい数多くの激励の声があった。
「こんなに応援して貰っている、投票もしていただいてレースに出られる。自分の都合(ケガ)と気持ちだけで休んだらいけないな」
小林は自分の愛車を眺めながら、気持ちを奮い立たせる。左鎖骨を繋げるプレートを埋める手術から2日後、自転車に乗り始めて練習を再開。
「できるだけやってみよう!やれそうだ」
だが、身体は違和感しかなかった。骨とプレートを留めているボルトも通常より多く、柔軟性にも欠ける。それでも、多くのファンのためにベストを尽くしたかった。

自分の身体が自分の身体とは思えない感覚で、アルテミス賞レースに参戦。
「痛みを感じないでもがくと、骨が割れちゃう」という医師の判断もあり、痛み止めの薬も服用禁止であった。そのような状況下、いざ発走機に。
「この緊張感で走る環境は最高。やっぱり、私は競輪が大好きだなぁって」
アルテミス賞レースは惜しくも2着だったが、小林は優勝以上のものを得たかも知れない。
「言い方は悪くなるけど、ごまかしながらでも良い着を。そうなると戦い方を変えなきゃいけない。これまでレースの中で全く気にしていなかった部分に目がいく、発見ができるように。駆け引きは精神的なものが大きく左右、動じなさそうな選手でも一瞬は何かある。実際、レースで先行しようと思っても、先行できる選手は1人だけ。そこでみんなの走り方が変わる、動きがある。その瞬間が分かると言うか、アンテナが敏感になって、レース自体が面白くなっている」

ソフトボール時代は捕手というポジション柄、試合のVTRを熱心に観た記憶があるという。競輪選手になってからはさらに拍車がかかり、レースのVTRを何度も繰り返して観る。しかもただ観るだけではない。
「この人、どうしたかったんだろう?」
「こう考えているから、こういうことされたら嫌だろうな」
「自分だったら、どうしているかな?」
予測したり、自分自身に置き換えてみたりするようになった。

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