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2023/02/13

P-Navi編集部

那須の挑戦〜観光DX 『NasuCycling.net』の誕生

那須の挑戦〜観光DX 『NasuCycling.net』の誕生

コロナ禍に大きく減速、収縮してしまった日本の観光産業。いま、そんな状況から脱却し、観光地が抱える課題を解決すべく、観光DX(デジタルトランスフォーメーション)を押し進めようという動きが生まれている。
観光DXは、旅行者に便利になるだけでなく、業務のデジタル化、効率化を進め、さらに得られるデータを活用することで、新たな価値を生み出せると期待されている。


美しい環境が広がる那須。このダイナミックな絶景の中を自転車で走るのは最高だ

コロナ禍にあっても、密を作りにくいこと。そして、田園風景など、すでにある環境を生かせば、どんな土地でも観光客を呼び込める可能性があることから、注目を集めていたサイクルツーリズム(自転車を使った観光)。しかし、機材を使い、広域を動くため、初心者には最初の一歩が難しいのも事実。現実的には、多くの土地で模索が続いていた。ここで、人気イベント「那須高原ロングライド」などを開催し、地域密着型のプロロードレースチームも存在しており、自転車の聖地とも呼ばれる那須が、観光DXへの挑戦に立ち上がった。NasuCycling.netという新しい会員制webサービスを立ち上げたのだ。


那須高原ロングライド。那須では年間多くのサイクリングイベントやツアーが展開されている(那須高原ロングライドスタート会場より)

改めて、サイクルツーリズムの課題について考えてみよう。どこかを自転車で旅する時には、どの土地のどのコースを、どんな自転車をどう調達して、どう走るかをまず決めるのだが、トラブル時や、走りきれないとき、道に迷ったときなどへの不安もあるだろう。ガイドが付くパックツアーならこの心配はないが、必ずしも、希望のコースを、希望日に、希望の価格で選べるとは限らない。
この課題は、皆に共通しており、自分で情報を辿り、デバイスを駆使し、見知らぬ土地も自分の趣向に合わせて走れるサバイバル能力に長けた「玄人サイクリスト」以外は、サイクリストであっても、なかなか新しいコースの開拓に踏み出せないのが現状である。


那須連山を眺めながら走る


田園風景を抜けていく

那須は、多くの観光施設や、魅力的なカフェ、レストランも多く、美しい自然に恵まれた土地で、すでにネット上にも多くの情報も掲載されており、初心者でも挑戦しやすい環境が整っている。サイクルツーリズムの中でも、すでに一歩進んだ位置にいる那須が、なぜこのような挑戦をすることになったのだろう。
この事業の立ち上げに関わり、那須でガイドツアーの企画運営を行っているライドエクスペリエンスの山本さんに伺うと、「那須の環境には大きなポテンシャルがあり、国内外のお客さまに、那須のサイクリングを満足していただいているという十分な手応えがあります。DXを導入することで、より多くの皆さんに那須でのサイクリングの楽しさを実感してもらえるようになったら、と思ったのです」。恵まれた那須の環境を生かし、多くの人を呼び込むために、新しい仕掛けが必要だということか。


那須でインバウンドを含め、多くのツアーを展開するライドエクスペリエンスの山本氏(中央)

「それで、サイクリストの来訪による地域への経済効果が継続的なものとなる、地域の事業者さんを広く巻き込んだ新たな仕組みを作ろうと思ったんです」と、山本さんは語る。そこで白羽の矢が立ったのが、DXの活用だった。さらに、「これまで、インバウンド向けを中心に弊社が蓄積してきた実績とノウハウを生かし、地域で共有し、地域全体のキャパシティを広げていきたいと考えています」と、力強く語った。これまで、他業種が連携してきた実績もあり、那須であれば、それは夢物語ではないだろう。

ここで、改めて那須エリアについて見てみよう。那須には、2,000m級の大きな山岳群があり、達成感のあるヒルクライムが楽しめる。さらには、なだらかな起伏が連なる高原エリアや、平地に広がる田園風景、涼しげな林道など、緑にあふれ、どこを走っても心が洗われるような感動的な景観が広がっている。おしゃれなカフェやレストラン、立ち寄りの楽しい観光施設も多く、まさに年齢・性別を問わず、走って気持ちよく、滞在して楽しい、サイクルツーリズムにぴったりな土地である。


那須では四季を通じて絶景が楽しめる。一度走るとファンになり、他の季節の表情を見るために再来訪するサイクリストも多い

ドライブを楽しむ観光客も多いが、交通量の少ない小道がエリア全体に多く走っており、道を知ってさえいれば、車を気にせず気持ちよく自転車での散策を楽しむことができる。レンタルe-bikeも導入済みで、ネックだった登坂の多い山岳や、高原地帯も、e-bikeを使えば問題なし。サイクルタクシーなど、緊急事態に使用できるサービスや、手ぶらで楽しめるサイクリングサポートサービスも展開されていて、サイクリングの環境はすでに整っている。民間が主導し、実行委員会を作り「那須高原ロングライド」を開催してきた歴史もあり、地域で連携して取り組む土壌もすでにある程度、固まっている。


那須でサイクリングを楽しむ来訪者

とはいえ、これらの情報が全国に行き渡り、誰でも気軽にトライできるかというと、まだ情報は、限られたエリアや人たちの間でのみで共有されていた。
そこで、可能性を広げるべくDXが導入された。今回、那須が立ち上げたのは、「NasuCycling.net」という那須を自転車でより満足度高く楽しんでもらうための会員制webサービスだ。具体的な内容としては、プロのガイドが、交通量が少なく、かつ景観に優れた小道をつないで作った「わき道サイクリングコース」のデータでの提供(有料会員のみ)や、会員限定のライドイベントの開催、会員同士が語り合い、生きた情報を交換できる口コミ機能、e-bikeレンタルをセットにした各種サイクリングツアーの予約機能、サイクリストを歓迎してくれる宿や店舗の情報、サイクルサポートタクシー、サイクリングサポートサービス等の紹介などを利用できる。


グルメライドを楽しむ層も多い


レンタサイクルで那須サイクリングを楽しむ来訪者

自転車で旅したい層が抱える不安やニーズを解消してくれる内容になっており、さらにこのサービスだけで、必要な情報を集め、手配できるのが大きな魅力。それぞれの連絡先をリストアップしたり、地図をチェックしてルートを考えたりする必要はもうない。誰でも、苦労なく、内容の濃いサイクリングに出発できる。

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